みなさんは、JRで遠くに行くとき、とりあえず学割証を片手にみどりの窓口に駆け込んでいませんか?でも、乗車券や特急券の区間をいじったり、JRが定める制度を活用することで、もっとお得に旅行ができます。ここに書いた方法を使って、浮いたお金を別のところ(観光なり食事なり)にまわしてみませんか?
夢の国に行くついでに東京観光も楽しもう
「ネズミの国に行きたい!」
そう思って、「名古屋市内→舞浜」の乗車券と、「名古屋→東京・品川」の特急券を買ったとします。この区間の学割運賃は5,100円、特急券は4,100円(自由席)なので、往復では18,200円かかっていることになります。
せっかく東京駅で乗り換えるので、東京観光を楽しみたいでしょう。この区間の利用の場合、うまく観光する場所を選べば、追加料金を一切払わずに東京で遊ぶことができます。この理由を以下で説明します。
まず、JRの乗車券は、100kmを越えている場合(大都市近郊区間内のみの利用の場合は除きますが、このケースはそうではありません)、後戻りをしない限りにおいて途中下車ができます。たとえば浜松や静岡で下車して某さ○やかのハンバーグを食べてもいいし、熱海で温泉に浸かるのもいいでしょう。特急券はきっぷに書いてある区間の通りでないと、途中で降りた駅から先の区間が無効になってしまうので、静岡で降りたい場合は「名古屋→舞浜」の乗車券と「名古屋→静岡」「静岡→東京・品川」の特急券を買いましょう。
次に、東京23区の一部区間(下図の太線区間。参照:JR東海公式サイトから引用)では、一筆書きになるような経路であれば自由な経路で乗車でき、先ほどの条件を満たせば途中下車ができます。先ほどの「名古屋→舞浜」の場合、品川~東京を通過していますが、必ずしもこの区間に乗車する必要があるわけではありません。たとえば「品川→渋谷→新宿→上野→秋葉原→錦糸町→東京」のように乗車し、途中下車できます。
特急券の区間を調節しよう
「時間は多少かかってもいいから、これよりも安くネズミの国に行きたい!」ここからは、そういう方にお勧めの買い方を紹介します。
新幹線は、1駅だけ自由席に乗る場合、お得な特急料金(「特定特急料金」)で乗ることができます。この料金制度は、一部区間に限り、2駅の区間でも設定がされています。さらに、新幹線と在来線特急を特定の駅(新横浜~相生の各駅、金沢、上越妙高、長野、長岡、新潟、新青森、新函館北斗)で当日中(在来線→新幹線の場合は翌日でも可)に乗り継ぐ場合、在来線特急の料金が半額になります。この制度を利用してみましょう。
まず、「豊橋→熱海」の新幹線の自由席特急券は3,060円です。名古屋~豊橋は、在来線を利用しています。「熱海」?なんで?という声が聞こえてきそうですが、ここから先の区間は在来線特急「踊り子」に乗りましょう。「熱海→品川」の指定席特急券(踊り子号には自由席の設定がありません)の料金は1,o20円(チケットレス。東京まで乗ると500円高くなります)ですが、乗り継ぎ割引が適用され510円になります。この場合、特急料金部分が3,570円と、一番最初の買い方から比べて500円ほど安くなりました!
さらに安くする場合、以下のように乗り継いでみましょう。
名古屋~在来線~浜松~新幹線~三島~特急~横浜~在来線~舞浜
この場合、新幹線の特急料金が1,980円(静岡で分割:「特定特急料金」制度を活用)、「踊り子」の特急料金が510円(1,020円の半額。東京まで乗りとおすと790円)となり、料金の合計は2,490円となります。快適さをある程度担保しつつ、1,600円を浮かせられました。
乗車券を工夫して買おう
新横浜線
このほか、今年できたばかりの「新横浜線」に乗る方法もあります。新幹線を新横浜で降り、東急電鉄に乗り継いでいく方法です。この場合、JR区間(名古屋市内→横浜市内)の運賃部分は4,570円となります。このルートをとる場合、東京まで乗りとおすのと全体の運賃はほぼ変わりませんが、東京の地下鉄沿線(とりわけ山手線の西側)にダイレクトにアクセスし、すぐに観光ができます。もちろん、JRで横浜へ出てみなとみらいや中華街を楽しむのも良いですし、相模鉄道~小田急電鉄のルートで鎌倉や江ノ島に寄るのもよいでしょう。

みなとみらい(横浜市)の夜景
一周乗車券
また、「1周」になるようなきっぷも、片道切符として買うことができます。というのも、JRの乗車券制度(旅客営業規則)では、「後戻りしない限り、同じ駅に2度たどり着くその駅まで」を片道乗車券と定めているためです。なので、東海道新幹線により東名間を単純往復するのでは片道切符は成立せず、たとえば中央本線や北陸新幹線を往復の一方で利用することになります。
しかも、長距離の片道きっぷは、1キロあたりの単価(賃率)が短距離のものより安くなります。この性質を活かせば、単純往復よりも安くなる、というカラクリです。
では、さきほどのネズミの遊園地に行く乗車券の話に戻りましょう。名古屋〜東京の片道で中央本線を利用する場合、以下のようなルートになります。
名古屋→新幹線→東京→特急「あずさ」→塩尻→特急「しなの」→名古屋
この場合、乗車券代が8,530円+220円×2(=東京~舞浜の往復)=8,970円、特急料金が4,100円(新幹線自由席)+2,550円(あずさ号指定席:あずさ号は全車指定席)+2,730円(しなの号自由席)=9,380円で、合計は18,350円です。この乗車券は、先ほどの「太線区間」を通過しているので、品川から新宿まで一筆書きになる経路であれば好きな駅で途中下車して観光できます。
普通に買う場合とほぼ同じ値段で、東京に行くついでに甲州・信州も旅できるなんて、なんとお得なことでしょう!ちなみに、特急しなの号について、塩尻から乗る場合、中津川から快速列車とすると1,000円を浮かすことができます。(※松本に立ち寄る場合は、塩尻~松本の往復乗車券480円を買い足しましょう。)

中央本線 勝沼ぶどう郷~塩山
さらに、北陸新幹線を経由した乗車券も紹介しておきます。
名古屋→新幹線→東京→新幹線→長野→特急「しなの」→名古屋
この経路で乗車する場合、乗車券が9,060円+220円×2(=東京~舞浜の往復)=9,500円、特急料金が4,100円(東海道新幹線自由席)+4,270円(北陸新幹線自由席)+1,470円(しなの号自由席:乗り継ぎ割引適用)の8,740円、併せて18,240円です。北陸新幹線の特急券については、上野からの乗車の場合210円、大宮からでは1,100円の節約になります。また、この乗車券は品川~赤羽で「太線区間」を通過しますので、東京観光も工夫しながら楽しめます。
東京~大宮の新幹線の所要時間はほぼ在来線と変わりませんので、この区間では在来線に乗るのがおすすめです。とくに池袋・新宿など山手線の西側の場合、いったん東京駅に出るよりも埼京線や湘南新宿ラインで大宮駅に出たほうが時間も節約できます。

北陸新幹線 長野駅にて撮影
さらにいえば、この経路の場合、上州や信州を大満喫できるのも魅力的です。世界遺産の「富岡製糸場」(高崎で下車し私鉄に乗り換え)、軽井沢のリゾート、牛に引かれてでも行きたい善光寺、栗のスイーツが美味しい小布施(長野駅より私鉄でアクセス)、日本三大車窓のひとつ「姨捨(おばすて)」(長野~松本間に所在)などの魅力的な観光地があります。これらもいっぺんに行ってみましょう。

善光寺(長野市) 2022年の「御開帳」の時期に撮影。

富岡製糸場(群馬県富岡市)。
まとめ
折角夢の国に行って、それだけで帰ってくるのはもったいない!今あげたようにお金をかけずに乗車券や特急券の区間をカスタマイズしつつ、「ほかのところもついでに観光」しませんか?

寝覚の床(長野県上松町) 中央本線の場合、名古屋方面を向いて右側の車窓から見える

平和観音(山梨県韮崎市) 中央本線の場合、松本方面を向いて左手の車窓に映る