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76号

【76号】「Let’s enjoy freepaper!!」座談会「これからのフリーペーパーの話をしよう」完全版

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『粋』読者の皆様、こんばんは。企画部の村尾です。今年も『粋』をよろしくお願いいたします。

さて、先日、弊団体では無事、新刊となる『粋』76号を発行することができました。これも皆様の日ごろからの支援あってのことです。誠にありがとうございます。

この76号も注目の記事が目白押しとなっているのですが、今回はその中から、「フリーペーパー」というメディアそのものの魅力に迫る企画「Let’s enjoy freepaper!!」(p.30-31)内で取り上げさせていただいた座談会「これからのフリーペーパーの話をしよう」の完全版をご紹介いたします!

全国各地の大学でフリーペーパーの制作に勤しむ学生たちがオンライン上で集結して行われた本座談会。本誌ではスペースの関係上取り上げられなかった質問・解答も多くありました。そういった問答もすべて盛り込んだ完全版となっております。ぜひ、ご一読ください!!

今回の座談会に参加してくださった皆様

名嘉真(なかま)瑠花さん:『CAMPUS LIFE』製作スタッフ

信岡友さん:『名大美男・美女日記』製作スタッフ

関千尋さん:『Poppy』製作スタッフ

高崎晋太郎さん、米澤諒さん:『Bootleg』製作スタッフ

茂田華菜さん、吉川日菜子さん:『moco』製作スタッフ

自分のやりたいことに挑戦し、雑誌で表現するというコンセプトに惹かれました(米澤さん)

―フリーペーパーの制作には、どういったきっかけで携わるようになりましたか?

名嘉真:私たちの世代には、コロナ禍に巻き込まれてやりたいことに挑戦する機会が潰され、苦労を余儀なくされた学生がたくさんいます。そんな状況の下で、制約がかかる中でも自分たちで何かを作り上げたいという思いを抱いたことが、そもそものきっかけでした。そして私自身、メディアの制作に興味があり、インタビューを通じて色々な人の話を聞き、それを形に残せるというフリーペーパーの魅力に惹かれ、制作に加わりました。

信岡:もともと自分たちの団体はオンラインでの活動をメインとしており、新しい層に自分たちの活動を届けるためにも、オフラインで何かしらの活動ができたらという思いがありました。また、Instagramでバラバラに公開されているそれぞれの投稿に結びつきを与えることで、よりよい表現ができるのではないかとの考えもありました。そして、どうすればそれらを実現できるかを模索したときに、フリーペーパーという答えにたどり着きました。

関:コロナ禍の影響で憧れの大学生活とは縁がなく、また、大学について知らないこともたくさんありました。だからこそ、フリーペーパーを通して知らないことに夢中になりたかったし、自分と同じ思いをしている大学生の役に立ちたいと思い、制作に参加しました。

米澤:「フリーペーパー工房」のことは、大学に入ってすぐの新歓で知りました。自らのやりたいことに挑戦して、それを雑誌という形で表現するというコンセプトに惹かれ、入部を決めました。

高崎:大学の近くで設置されていた冊子を手に取ったことがきっかけです。読み進めるうちに、自分もこの団体で活動したいと思うようになり、自身も冊子の制作に携わるようになりました。

吉川:私は元々紙媒体が好きで、かねてよりそういった媒体の制作をしてみたいと思っていました。いくつかの団体を調べ、最も自分に合っていると感じた『moco』に入部し、今に至ります。

茂田: 私はカフェ巡りが趣味なのですが、さまざまなカフェを回っているときに、ふと、店頭に置かれているフリーペーパーを手に取りました。それをきっかけにフリーペーパーという媒体の魅力に絆され、自分も制作してみたいと思いました。

やりたいことを自由に表現するということが特にやりやすいのが、フリーペーパーだと考えます(茂田さん)

―皆様が考えるフリーペーパーの良さは何ですか?

名嘉真:自分たちのやりたいこと・作りたいものを作れるところにあるのではないでしょうか?私たちの団体が結成されたとき、最初に決まった方針は「自分たちがやりたいことをやろう」でした。自分たちが話を聞きたい人に取材をし、自分たちが読みたい記事を作る。その精神が軸になっていますし、それがフリーペーパーの醍醐味だと思います。

信岡:有料の雑誌と比較したときに、フリーペーパーの自由度は相当に高いと思います。有料の雑誌は読者に買ってもらうものなので、読者のニーズに最大限沿わなければなりません。しかし、それがないフリーペーパーでは、より「自分たちが書きたいもの」に割ける裁量が大きいと思います。自分たちはこれが書きたいんだ、という思いをより強く表現できることにフリーペーパーの良さを感じます。

関:無料なので手に取りやすく、一枚一枚ページをめくるたびに、情報が入ってくるところにあると思います。また、学外のお店に掲載料をいただかないため、気軽に取材ができるところもフリーペーパーならではの強みではないでしょうか?また、紙という、触れることができる材質に自分たちが制作した証を残すことができることも、魅力の一つだと考えます。

米澤:読者が手に取りやすくなるという意味で、無料で読める点は大きいと思います。また、掲載される広告を通じて経済効果が生まれるという点も大きいのではないでしょうか?

高崎:やはり「フリー」であること、無料であることに尽きるのではないでしょうか? 代金という概念がないことで、より手軽に手に取ることができますし、それでいて有意義な情報を得られるというのは、願ったりかなったりだと感じます。

吉川:紙という材質でできた媒体であることに、魅力を感じています。電子媒体とは異なり、紙という実態を持っていることで街中のどこでも手に取ることができるのは、フリーペーパーならではの強みだと思います。

茂田:自由度の高さにあると思います。他の媒体・メディアと比べて、やりたいことを自由に表現するということが特にやりやすいのが、フリーペーパーだと考えます。

私たちが学生だからこそ、学生が気になること、求めていることを考えやすいと思います(関さん)

―大学生がフリーペーパーを作る意義は、何だと思いますか?

名嘉真:私たちのコンセプトは「大学生活のそばにあるフリーマガジン」ですが、学生が抱えている悩みをテーマとして取り上げることは、作る側が当事者の学生でなければできないことだと思います。実際、過去には設置店舗で冊子を読んだという社会人の方から「今の大学生はこんなことを考えているのですね。自分にはない感性・発想がありました」という趣旨のコメントを頂いたこともありました。当事者だからこそどういった情報がほしいかが分かりますし、悩みに対する最適解も的確に出せる。その強みは唯一無二だと思います。

信岡:利害関係を気にせずに制作ができることだと思います。社会人になってからそういった冊子の制作をしようとすると、どうしても利害関係やしがらみ、金銭の移動などが生じてしまって、熱情のままに制作するということは難しいのではないかな、と感じます。そういったことがなく、ただただ「これを書きたいんだ」という思いに乗せた制作ができるのは、学生団体の特権ではないでしょうか。

関:作り手の私たちが学生だからこそ、学生が気になること、求めていることを考えやすいと思います。いくら良い内容の記事、企画でも、読んでもらえないことには始まりません。学生が親しみやすいフリーペーパーを作ることができることにこそ、私たち『Poppy』の強みがあると考えています。

米澤:学生が作ったフリーペーパーだからこそ、「こんな冊子を自分と同世代の人が作っているなんて!凄い!!」といったように、学生を感動させられることもあると思います。大学生という、大人と子供の境界に在る我々が質の高い誌面を形成することで、生み出せる感動があるのではないでしょうか?また、私は、それぞれの世代に同世代にしかわからないようなネタや空気感が存在すると考えます。そういった空気感を掴み、大学生にとっての分かりやすさを追求していくという試みができるという点は、大学生がフリーペーパーを作る意義の一つと言っていいと思います。

高崎:フリーペーパーは、製作者が各々の視点から物事を見つめ、その視点を元に執筆されている点に面白さがあると思います。たとえ複数のフリーペーパーが同じ物事をベースに記事を書いたとしても、製作者が違えば異なる視点からの分析になり、それぞれの内容にも変化が生じてきます。そういった観点から考えると、大学生がフリーペーパーを作る意義は、大学生ならではの視点から対象を見つめられるという点に帰着するのではないでしょうか?

吉川:私たちの団体では創業当初から「大学生にしかできないフリーペーパーを作ろう」という理念に則った制作を作っていますが、時折紙面内容について「大学生が作っているのだから、多少は羽目を外した企画があってもいいのでは?」といった趣旨の意見を貰うことがあります。そういった意見を受け取って考えたことなのですが、大胆な企画が実行できるのは、大学生の制作ならではないかな?と思います。

茂田:私は社会人の方々とフリーペーパーを制作する団体にも入っています。その団体で作っているフリーペーパーと比較して考えたときに、『moco』で制作しているフリーペーパーはやはり「大学生らしさ」を前面に出して作れているな、と思います。具体的には、取材対象に大学生が多かったり、一見子供っぽく見えるような企画でも気兼ねなく誌面上で実現できていたりします。そういったことは、社会人になってからはなかなかできないのかもしれません。

「自分たちが楽しんで作る」という思いを大切にしています(名嘉真さん)

―皆様はフリーペーパーにどのような思いを懸けていますか?

名嘉真:私たちは、「自分たちが楽しんで作る」という思いを大切にしています。作っている側が楽しくなければ、他の読者の方々にも、きっと楽しんではもらえないと思っているので。

信岡:自分が作ったものが形になって配られるというところに、フリーペーパーという媒体の面白みはあると思います。制作するときにも、その面白みは忘れないようにしていますね。

関:読んでくださった方々から寄せられる「面白かった!」や「次も楽しみにしているよ!」などの声が本当に励みになりますし、「素敵なもの」を発信できるのがすごく楽しいです。そのためにも、毎号の作成に情熱を注いでいます。

米澤:私は、記事を作るときに「内輪のノリになりすぎないように」ということは意識しています。仲間内で帰結するのではなく、全く知らない人が見たときにいかに面白いと感じてもらえるか。その視点を忘れてはならないと肝に銘じつつ、日々の制作をしています。

高崎:私の目標は、いわゆる「大学生活の面白さ」を誌面から伝えていくことです。大学生活の面白みが大学生たる自分たちにしか書けないから、ということはもちろんですが、自分達より年下の年代の方々が読んだときに「こんなことができるんだ」と思ってもらえるように、という思いもあります。

吉川:フリーペーパーの制作は自由度が高いですが、その制作を通して、客観的な視点を取り入れなければという意識は働かせています。また、私たちの団体は『moco』という名前で活動していますが、これはイタリア語で「まっすぐ」という意味の単語から取られています。その名のように、それぞれのスタッフが一丸となってひたむきに誌面を制作していくんだ、という思いを大切にして制作を重ねています。

茂田:私は、自分が作ったフリーペーパーを誰かに読んでもらって、その感想を聞くのがすごく好きです。感想を聞くことでフリーペーパーを作るやりがいを実感できますし、私の原動力になっています。

今後は情報誌的な要素も取り入れていきたいと考えています(信岡さん)

―皆様の団体の、今後の展望は何ですか?

名嘉真:私たちの団体は、設立から1年とちょっとになります。県内の大学生の中から「私もこういう雑誌を作ってみたい」と思ってくれる人が現れて、今後も続けていけたら……というのが、今の展望です。そして、私たち自身も、今後の活動の中で、より多くの方にお話を聴けたらいいなと思っています。

信岡:これまでの冊子は写真集の側面が大きかったですが、今後は情報誌的な要素も取り入れていきたいと考えています。

関:近頃になって、多くの企業や飲食店の方々と連携した企画作りをするようになりました。それらの企画を冊子に還元できればと思います。

米澤:我々はこれまで「自分たちがやりたいことを形にする」というコンセプトで活動を続けてきましたが、時折「自己満足になっていないだろうか?どうすれば読者には楽しんでいただけるだろうか?」という疑問を抱くことがあります。今後は、これまでの理念を大切にしつつ、より読者目線に立った制作をしていこうと考えています。また、フリーペーパーを制作するうえで費用面の問題は避けて通れません。だからこそ、広告の掲載や企業様との提携などについてもしっかりと推し進めていかなければと考えています。

吉川:現在、『moco』は全盛期と比べるとやや冊数を落としての発行が続いています。現行の水準を維持しつつ、全盛期と同程度、あるいはそれ以上の冊数まで発行部数を盛り返せるようにしたい、というのが、現時点での一つの目標になっています。

自分にはない価値観を模索してくれたら、と思います(高崎さん)

―周囲の大学生に提言したいことはありますか?

名嘉真:雑誌を作るようになって、「いろいろな人と話をすればするほど、自分の選択肢は広がるな」と思うようになりました。ただし、誰かと繋がるということは、人によってはハードルが高いことだと思います。私たちのようなフリーペーパーの存在が、誰かと誰かの橋渡し役となれればいいな、と思っています。

信岡:私は、自分の興味があることをもっと積極的に発信する社会になったら、きっと面白いだろうなと考えることがあります。私の場合はそれをフリーペーパーという媒体で行っていますが、それに限らず自分を発信する社会が訪れたらいいな、と考えています。

関:自分のやりたいと思っていたことを、一緒に実現させてくれた仲間には感謝の気持ちでいっぱいです。自分のやりたいと思ったことを口に出したら、きっと賛同してくれる人がいると思うのでどんどん挑戦していってほしいと思います。

米澤:私は、フリーペーパーに関わらず、身の回りの本や雑誌には自分の知らない知識・自分の暮らしや活動に取り入れやすいアイデアなどの情報が詰まっていると考えています。そのうえで、無料ゆえに経済的な余裕に関係なく手に取っていただきやすいという強みがせっかくあるわけですから、是非フリーペーパーをたくさん読んで、新しい発見を積み重ねてほしいです。

高崎:「もっと違う価値観を持ってほしい」と提言したいです。私自身、誌面の制作にあたって、自分とは違う考えをもったスタッフと意見を交わし、目指すべき結論を探るということをしています。なかなか自分と違う考え方を受け入れられないという方もいるかと思いますが、一度頭を柔軟にして、自分にはない価値観を模索してくれたら、と思います。

吉川:私たちは京都を拠点に活動をしていますが、最終的な目標は「京都に愛着をもってほしい」というところにあると考えています。なので、冊子を読んでほしいというのはもちろんなのですが、冊子を通じて京都のことをもっと知ってほしいと思います。

茂田:他の人とのかかわりを大切にしてほしいと思います。今回の座談会もそうですが、普段会うことのないような方々と話すことができる機会はとても貴重なことだと思います。そういったチャンスをフイにせず、挑戦をすることで多くの人と出会って、新しい視点をたくさん見つけてほしいと感じています。

今回協力してくださった団体の紹介

名大美男・美女日記

⇒2018年に、「努力する名大生を応援したい!」をコンセプトにInstagram上で活動を開始。カメラマンや美容系の学生とも連携しつつ、名大生の素敵な魅力を引き出し、発信することを目指している。2021年にフリーペーパーを用いた発信活動を開始した。これまでに3号を発行。

CAMPUS LIFE

⇒2021年に沖縄の大学生6人を中心に創刊。「大学生活のそばにあるフリーマガジン」をコンセプトに、就活から海外留学まで、大学生にとって実用的な情報を発信する。2022年1月には地元のFMラジオである「FMぎのわん」で取り上げられるなど、その注目度は沖縄全土で高まりつつある。これまでに4号を発行。

Poppy

⇒2021年に法政大学市ヶ谷キャンパスにて創刊。「法政大学生に夢中を届ける」をコンセプトに、同大学に通う学生にとって有益な情報を提供することを目的とする。大学生の目線に特化し、多くの学生に親しんでもらえるフリーペーパーを理想像に掲げる。これまでに3号を発行。

Bootleg

⇒2004年に結成されたサークル「明治大学フリーペーパー工房」より発行。「明大生のやりたいことを形にする」をコンセプトに日々活動し、メインターゲットたる明治大学の学生に楽しんでもらえるように、工夫を凝らした冊子の制作を展開する。これまでに51号を発行。

moco

⇒2009年に京都の大学生を中心に創刊。「ぐんとあがる瞬間をあなたに」をコンセプトに、「日本一大学生の多い街」とも呼ばれる京都で生活する大学生たちのモチベーションをあげるきっかけになるようなメディアを目指す。これまでに45号を発行。2022年には「フリーペーパー・オブ・ザ・イヤー」にて「フリーペーパー専門店賞」を獲得した。

おわりに

ということで、今回は76号31ページに掲載されている座談会企画「これからのフリーペーパーの話をしよう」の完全版をお届けしてまいりました。最後まで読んでくださった皆様、誠にありがとうございます。

私自身、この団体で2年近くフリーペーパーを作ってきましたが、他団体のスタッフと話す機会はほぼなかったといっても過言ではありません。ましてや、他の都道府県で自分たちと似た活動をしている同世代の学生と話すなんて、この企画を担当するまではそうそう想像できることではありませんでした。

しかし、今回こうして全国でフリーペーパーを作っている学生の皆様のお話を聴けたことで、刺激や学び、共感など、得られるものは大変多く、また、こうして新たな縁を繋いでくれたフリーペーパーというメディアそのものに対して、より魅力的に感じるきっかけとなりました。総じて、今回お話を聞くことができて、大変貴重な経験になったと感じています。

最後に、今企画に協力してくださった5団体・7名の学生様に、改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

今後とも『粋』では、皆様の日常をより素敵にするコンテンツの数々を提供していければと考えておりますので、何卒、今後ともよろしくお願いいたします。

それでは、またどこかでお会いしましょう~。

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村尾 佳祐

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