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コラム

【THE・今夜も音楽三昧】#45「短編集・今日の天気は…」

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皆様こんばんは。「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いします。

突然ですが、皆様は日々の生活の中で、どれくらい空を観ますか? 空は1日の中で様々な色・表情を見せてくれる存在ですよね。気持ちがふさぎ込んだときなんかは、ぜひ見てみるとおススメです。

というわけで、今回はそんな「空」が1つテーマになっている短編集にしてみました。よろしければ、今週も最後までお付き合いくださいね。

SCENE 01:初雪が観測されそうです@金沢

初雪、か…。お天気番組で発された言葉を反芻しながら、窓の外に目をやる。日本海側に位置するこの街では、毎年結構な雪が降る。先週お父さんがスタッドレスのタイヤに変えてくれたのよ、と母が嬉しそうに言っていたのを思い出す。

お天気番組の画面に映っているのは、妙にまったりとした声が特徴的なお姉さんだった。画面の上の端に頭が届きそうになっている。相当背が高いのだろう。

大学の講義は午後からだ。昼食をカップヌードルと冷蔵庫のサラダで済ませ、正午前に家を出ると、天気予報の言っていた通り、ちらちらと雪が降り始めた。公園の横を通ると、早帰りの小学生たちが「雪だ~!雪だ~!」とはしゃぎまわっていた。その気持ちは分かる。雪かきが厄介だったり自転車の運転が難しかったりはするが、それでも初雪にテンションが上がってしまう自分がいる。毎年来るのに、だ。それを横目に見ながらさらに歩みを進めていると、前から3人家族が歩いてきた。母親はベビーカーを押している。

将来も自分は雪の降るこの街で過ごしていくのだろう、と漠然と思っている。そうなると、10数年後の自分は誰といるんだろう…という漠然たる問いが頭によぎった。30歳になった自分は、誰と初雪を見ているのだろうか。自分の脇を通り過ぎる3人家族を横目に、考えてみる。自分は誰と、初雪の喜びを分かち合えるだろうか?

今 空を舞う 粉雪を集めよう もう一度 少しずつ 少しずつ
やさしさも ぬくもりも よみがえる ふたりだけの 物語が 輝き出すよ
「冬のファンタジー」(1995年、作詞・歌唱:カズン)

金沢駅のシンボルといえば、こちらの巨大な門。「鼓門」といい、 能楽の太鼓をイメージした、捻れを活かした雅なデザインが特徴的

SCENE 02:太平洋側では雷雨にもご注意ください@小倉

会議室にて、呆然とする自分が窓ガラスに映っているのを認める。そこまではいいのだが、どうすりゃいいのか、正直分かっていなかった。

会議室の外にある談話スペースのテレビの天気予報の声が聞こえてきた。振り返ると、切れ長の目が印象的なお姉さんがとても大人びた口調で、終日荒天であると告げていた。これからまだ雨が続くのか…と、再び窓の方に向き直す。

ここは駅前にあるとあるオフィス。そして俺は先の会議でとんだ大へマをやらかした挙句、ある同期に鋭い指摘をぶち込まれていた。その同期が普段は暢気で人当たりの良いヤツだったこともあって、その口から放たれた指摘は鋭利さを数割増しとして心に突き刺さっていた。ドラマであればここで主人公が目を覚まして思い直し、快進撃につなげ、仲間の絆に感謝する…というのが定番パターンだが、残念ながらここはドラマではなくノンフィクションの現実世界だ。そうやすやすと思い直しができるはずもない。

そうしてしばらく突っ立っていると、ドーン!!という衝撃音が響き渡った。雷が落ちたようだ。こりゃ本格的に早く帰らなくてはまずい。ぶっちゃけ何がまずかったのかは1mmも理解できていないが、とりあえず残りの仕事を全て片付けて定時に帰らなくては…と思いつつ、なぜか自分の足は動かなかった。それがなぜなのか、やっぱりわからなかった。 ふと会議室の外を振り返ると、テレビはさっきの番組の続きをやっていた。

司会者にアニメの話題を振られたと思しきさっきのお天気お姉さんが、天気を伝える時とは明らかに違う嬉々とした声で魅力を熱弁しているところだった。その変化の凄さに思わず苦笑いをしたとき、やっと足が動くようになり、俺はデスクに戻った。

貴方は稲妻のように私の心を引き裂いた
蒼ざめた心ふるわせて立ちつくす 一人 立ちつくす…
「冬の稲妻」(1977年、作詞:谷村新司、歌唱:アリス)

今では社会人が仕事の合間に一服…というのもご法度となりつつある。ただ、ココアシガレットのパッケージは今なお渋い格好よさだ

SCENE 03:雨は昼前には止み、午後は青空でしょう@鎌倉

今日は全休日。普段なら学校の図書館で自習でもするのだが、ちょっと憂鬱なことがあって、きょうは一日家でゆっくりと過ごすことにした。

スマホの画面では先ほどまでお天気を伝えてくれていたお姉さんが、スタジオトークに映っている。大の鷹党(=プロ野球・福岡ソフトバンクホークスのファン)らしく、先日ホークスがFAで補強した強打者について心から嬉しそうに語っていた。実家が長崎にある私にとってはとても共感できて、ちょっぴり嬉しい。いい意味で小学生の子供みたいな、天真爛漫で軽快なトークを聴きながら、私は台所でおでんの仕込みを進めていた。

先日実家から送られてきた仕送りの中に、竜眼(ばくたん)も入っていた。はんぺんの中にゆでたまごが入ったもので、長崎ではおでんの具材として親しまれている。今日、おでんを作ろうとしているのもそれが届いたからだった。 全体の半分くらいが終わったころ、窓から陽が差し込み始めた。予報通り、雨が上がったらしい。ちらりと外に目をやると、朝に振っていた雨が嘘のような、からっとした青空だ。

おでんの仕込みももうすぐ終わる。ちょっと気が軽くなった気がするし、終わったら鎌倉の大仏まで散歩してみようかな。そんなことを考えながら、牛すじに竹串を打った。

青い鳥が逃げたのも運命と他人は言うけれど
いつの世にも神様が決めた粋な未来が待っている
「雨上がりにもう一度キスをして」(2003年、作詞:桑田佳祐、歌唱:サザンオールスターズ)

太陽の照り返す坂道。冬になると坂上からの向かい風が辛いが、下るときは澄んだ青空と追い風を同時に楽しめて、オツである

SCENE 04:一日を通してすっきりとした空模様になりそうです@名古屋

社会人生活も2年目の半ばに入ると大変だ。自分達だってまだまだ会社の中では若輩者なのだが、それでも新卒の後輩達に教えなければならないことが多いし、自分の仕事も複雑化の一途をたどる。それだけ難しい仕事を任せてもらえていることには感謝しなければいけないし、上司も善人揃いで環境はかなり良いのだが、やっぱり時にはしんどくなる。

お天気番組では、満天スマイルが魅力的なお姉さんが全国の天気を説明している。今日は全国的に良く晴れることもあって、その笑顔がいつもの数割増しで眩しく見える。

あわただしく準備をしながら靴箱の上に目をやると、東京タワーを模した小さなオブジェが目に入ってきた。高校の修学旅行で買ったもので、ボタン電池駆動で光るというオマケつきの代物だ。そして、その横に置かれているカレンダーを見て、気が付く。今日は…金曜日。つまり、明日は休みだ。

その事実が分かった瞬間、急激に気持ちが楽になる。現金すぎる…と苦笑しつつも、とりあえずがんばってみようか、と気合を入れて玄関を飛び出した。

東京タワーで昔 売ってた土産物に貼りついてた言葉は「努力」と「根性」!
Hey,hey,hey,Girl! 仕事だからとりあえずがんばりましょう
Hey,hey,hey,boy! 空は青い 僕らはみんな生きている
「がんばりましょう」(1994年、作詞: 小倉めぐみ、歌唱:SMAP)

名駅前のランドマークの一つ・大名古屋ビルヂング。2010年代に大幅なリニューアルがなされたが、その後も名前は「ビル『ヂ』ング」だ

おわりに

というわけで、本日は「空模様」をテーマに4つの小噺をお送りしました。

筆者は最近、ローカルの天気予報の動画をYoutubeで探すのにハマっています。当然過去の者なので情報としての価値は皆無なのですが、中には自分が生まれる前に放送された自分が一度も行ったことのない都道府県の天気予報の動画なんかもあったり、付随する形でローカルCMが発掘できたりして、宝さがしみたいな気分になれるのが魅力的に映ります。

では、来週もまたこの時間にお会いしましょう~。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true  

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村尾 佳祐

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