皆様こんばんは。 今週も「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もどうぞよろしくお願いいたします。
今回は、少し趣向を変えて、「関西」にまつわる楽曲をいくつかお送りしたいと思います。大阪を中心とする地域一帯「関西」で織りなされる、音楽にまつわる日々のお話です。それでは最後までお付き合いください…
KOBE:タワーサイドメモリー
聖火リレーのトーチのような、独特のくびれた形のタワーが紅い光を放つのをぼんやりと眺められる海沿いのBARの一室にて、ため息をつきながら、出されたエメラルドグリーンのカクテルを飲み干す。思っていたよりも甘いな、と思いながらも、グラスをあけた。
1時間ほど前に、ずっと終わらせたい・終わらせなければならないと思っていた三角関係が決着した。残念なことに、自分を敗者として、だ。勝算がなかったわけではないが、最終的にはあいつに勝利を譲ることとなった。 もしかするとあいつは、この一連の顛末を三角関係とすら思っていないのかもしれない。癪に障らない程度に余裕を醸して、華麗にあの子のハートを手に入れていった。
あれほどの余裕があれば勝てたのだろうか? …と一瞬思案したものの、今となってはどうでもよいことかもしれぬ。ただ一つ、気になることがあるとすれば、あの子の心の内だろう。いったいどんなことを思って、あいつについていったのだろうか? そんなことを考えていると、バーテンが新しいカクテルを差し出す。海峡大橋のような純白と、大海のような紺碧の2層に別れたそれを、軽く会釈をしながら受け取った。
思案の夜が、暮れていく。
霧雨に誘われてタワーサイドに出れば 最終モノレールが東の空を流れ
あの娘は今も忘れないの?
Kobe Girl… いちばん素敵な君だけを見てた 彼のささやきを全部繰り返す
「タワー・サイド・メモリー」(1981年、作詞・歌唱:松任谷由実)

名古屋でタワーといえば、栄にある中部電力 MIRAI TOWER(旧称:テレビ塔)だろう。最近は夜になると隣接するオアシス21ともども鮮やかな緑に輝き、中区の夜を染め上げる
OSAKA:好きやねん、大阪。
「日本シリーズのチケットが取れたで、大阪に来いや」との一言で、大阪に住む高校時代の友人を訪ねることとなった。
新大阪の駅にて再開したそいつはオリックスの野球帽を頭にかぶっていることと、いわゆる「エセ関西弁」とは違う流暢な関西弁を語っていることを除けば、当時とさして変わっていなかった。おかげで当時の思い出談義は相当盛り上がり、彼の家までの移動はあっという間だった。家についてからも出されたコーヒーを飲みながら思い出をべしゃり続け、そうして話がひとしきり盛り上がったところで、一番聞いてみたかった質問をぶつけてみた。
「なー、おまえなんでまた大阪なんか行ったん?」
かつて自分やその友人が住んでいた町は地元志向がとても強いと言われていた。実際、自分の高校でも3割近くが地元のそこそこ頭のいい大学を選び、残りの7割の内の4割も地元の学校に行った。しかしそいつは、「地元のそこそこ頭のいい大学」とほぼ同レベルの大阪の大学に進んだのだった。理由は何だったのか?
しかし、彼の口から出た答えは、まさかの「ん~、分からん!」だった。「まあ当時は、なんでみんな地元ばっか選ぶんや~、とか、俺は俺の道を征くんや~、とか、そういう発想しかなかったからな」と彼は振り返った。しかし、その目に公開はないように見える。その証左に、彼はこう続けた。「でも、俺は今の大阪が好きやで」と。
ならいいか、と素直に感じた。
ほんでもってそんで毎度あり! 俺ら 商売繁盛! えぇ環境! 大繁盛!
ほんでもってそんで毎度あり! ほんなら呑んで喰って よぉ寝て 大爆笑!
この街大阪 やっぱ好きやねん!
「好きやねん、大阪」(2005年、作詞・歌唱:関ジャニ∞)

ここで番宣を一つ。先週発行された弊誌75号には、名古屋で暮らす我々が「好きだなも、名古屋。」と言えるようになるための企画が掲載されています。ぜひご一読を
KYOTO:京都物語
哲学めいたことをいろいろと考えてしまって、京都旅行を思い立った。
新幹線を降りる時、自分とは逆に京都から旅立つ人を見送る人波に出会った。しばしの別れの瞬間か…とぼそりと呟く。
人は人生で多くの人と出会い、そして離れる。というか、人生そのものが史上最も壮大な出会いと別れと言っても過言ではないだろう。誕生することによってこの世界と出会い、死を迎えることによってその世界に対して強烈な別れを告げていく。それゆえに、人生を歩むことは出会いと別れを抜きにしては語れない。自分だって若いなりにそれなりの人々と出会い、それなりに旅立つ者を送り出した。
それにしても、なぜ京都はこれほどに人の魂を感じるのだろうか。幽霊の類ではないのだが、どこを歩いていても誰かのことが頭をよぎりだす。そこに息づく長い歴史がなせる業だろうか?そんなことを考えながら歩いていると、銀杏の木が黄色く色づいた一角が見えてきた。遠くに龍安寺が見える。石庭に座れば誰かと対話できるんじゃないか、という柄にもない幻想的なことを考えながら、向かってみることにした。
“都や御所”の紅葉染まりて 歌人が愛でたは秋の南禅寺
嵐山にて雪も恋しや 南天の実のような赤い紅をさすわ
帰らぬ人への想い出溢る場所 幾千年もの涙の別れ道
昨日と明日を結んで帯にして 桜の花咲く頃 また京都へ
「京都物語」(2010年、作詞:桑田佳祐、歌唱:原由子)

秋は四季の中で一番、植物を身近に感じる季節ではないだろうか。燃え上がるような紅蓮の紅葉を見て年の暮れの足音を知る人もいるのでは
おわりに
というわけで、今回は関西が舞台の楽曲に関するお話でした。
筆者は愛知で生まれ愛知に育ち、今も愛知に住んでいますが、もしも県外に居を構えるとしたら、実は東京よりも大阪だったりします。理由ははっきりと説明できないのですが、大阪の持つ人情味というか、そういう空気感は何だかんだで田県民にも刷り込まれているのかもしれませんね。
それでは、また来週もこの時間にお会いしましょう~。
作者よりお知らせ
当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。
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このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。
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