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コラム

【THE・今夜も音楽三昧】#32「あの日の歌に寄す・晩夏篇(前)」

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皆様こんばんは。今週も「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いいたします。

9月も折り返しまして、いよいよ本格的に「晩夏」と呼ぶべき季節がやってまいりました。気温も日を追うごとに下がってゆき、本格的に秋を感じる季節が近づいてきます。

今回と次回は、そんな「晩夏」を彩る楽曲の数々を、小さな瞬間を切り取る不定期シリーズ「あの日の歌に寄す」に載せてお送りしたいと思います。それでは、今週も最後までお楽しみくださいね。

SCENE 01:秋の気配

些細なことから、また喧嘩をしてしまった。日没まではまだ少し時間があったので、むしゃくしゃする頭を冷やそうと散歩に出た。当てもなく歩いて、辿り着いた場所は、海沿いのあの公園だった。

遊具広場の横を抜け、階段を昇っていくと、白い展望台がある。頂上まで登り切って、欄干に肘をつき、街並みを見下ろせば、いつもの見慣れた街並みが広がる。ちょっと前までは自分もあのジオラマみたいな町に佇む人形だったかと思いを馳せつつ、喧嘩の内容を思い浮かべ、顔が苦々しくなる。

それにしても今日の喧嘩はノーガードの二人がアーミーナイフで抉りあうような、絶交覚悟の壮絶なものであった。これから本当に絶交と相成るのだろうか? 今となってはどっちが悪かったのかもわからなくなり、かといって先に謝罪をしようという気も起きず、ぼんやりと街を眺めるほかない。ついたため息は、冷たい風と混じって、あっという間に消えていった。

あれがあなたの好きな場所 港が見下ろせる小高い公園

あなたの声が小さくなる ぼくは黙って外を見てる

眼を閉じて 息を止めて 遡る ほんのひと時

こんなことは今までなかった 僕があなたから離れてゆく

僕があなたから離れてゆく 

「秋の気配」(1977年、作詞:小田和正、歌唱:オフコース)
小さい頃は「いつもの公園」だった場所が、大きくなるにつれて「思い出の公園」になる。
そして、完全に大人になったとき、それは「忘れじの公園」となる

SCENE 02:Super Chance

Off shore 琥珀色の細波が海の背を走る

Sun set 傾いた甲板にも西風さ 夏が終わる

「Super Chance」(1986年、作詞、売野雅勇、歌唱:1986 OMEGA TRIBE)

遠い島々が見たくなって、フェリーで旅に出たのが大体1週間前。船旅も残すところはあと2日となった。

西日に照らされたデッキに出る。海は凪。船内の自動販売機で買った缶コーヒーのプルタブを開け、半分くらいを一気に仰ぐと、あの顔が頭によぎった。船旅がはじまってすぐに船内のどこだったかでみた、自分と同じ年くらいの女性の顔だ。船旅の前に面識があったわけではないが、船旅に沸く他の客とは異なり、彼女の目には憂いの影が見えた。

しかし、この船は随分と広く、その女性を見たのはそれが最初で最後となりそうだ。今、この船のどこかでまた彼女は何かを上いているのだろうか? 考えても分らなかった。せっかくの船旅を答えのない思案で潰すのは惜しいと、残り半分の缶コーヒーを一気に仰いだ。

Ah,Super Chance! 夏の幻が青い水面で手を振るよ

Ah,Super Eyes! 「逢えたことを忘れないで」と君は眼を伏せた

「Super Chance」(1986年、作詞、売野雅勇、歌唱:1986 OMEGA TRIBE)
名古屋を流れる中川運河。先には名古屋港が見える。昭和時代の半ばまでは実際に貨物船が
往来していたそうだ。現在でも良く晴れた日には客を乗せた観光船が走っていることがある

SCENE 03:夏の終わり

「またいつでも来んだど!」と訛る祖父の挨拶を背に、父の実家を発った。今は最寄り駅で30分に1本の各駅停車を待っている最中だ。待っている間ににわか雨が降ってきたが、ホームには屋根があるので一安心だ。

小学生の頃から、田舎に住む祖父母の下で数日間を過ごすのは恒例行事だった。今年のように単身で乗り込む年もあれば、両親も伴っていた年もある。今年合った限り祖父母はまだまだしばらくは健在でいてくれそうだし、この慣例はまだまだ続くだろう。だが、一つ心残りがあった。今年も、田舎のあいつらには会えずに終わってしまったということだ。

祖父母の住む町は人口が少しずつ減っている。進学・就職を機に都会に出る若年層が多いのだ。田舎に帰る度に顔を合わせていた「あいつら」も例外ではなく、進学を機に町を出たと聞いたっきり会っていない。もう3年になるだろうか?そして今年も、帰省時期があいつらと被ることはなかった。

「間もなく、普通列車、須賀ゆきが6両で参ります…」

載ろうとしている電車が近づく。なかなかやまない雨と発射案内のアナウンスに身を委ねながら、あいつらに会うのが来年の宿題だな、とベンチから立ち上がった。

忘れじの人は泡沫 空は夕暮れ 途方に暮れたまま

降り止まぬ雨の中 貴方を待っていた 人影のない駅で

夏の終わり 夏の終わりには ただ貴方に会いたくなるの

いつかと同じ風吹き抜けるから

「夏の終わり」(2003年、作詞・歌唱:森山直太朗)
「電車に注意」とだけ書かれた蛍光灯と鳴り響くサイレン。 そんなレトロな駅の健闘は、
電光掲示板に合成音声というデジタル形式が次々と打ち立てられる中でも、しばらくは続きそうだ

おわりに

というわけで、今日は「晩夏」に関する3つの楽曲のお話でした。

この「あの日の歌に寄す・晩夏篇」は、来週に続きます。来週もぜひ、この時間にお会いしましょう~。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true

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村尾 佳祐

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