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コラム

【THE・今夜も音楽三昧】#22「7月最初は、最後の仲間(前)」

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最近暑いですね~。サムネイルも清涼感5割増し!

皆様こんにちは。「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いします。

暦の上では本日から7月となり、暑さも一挙本格化。そんな時期にお送りする今回と次回の「音楽三昧」は、「最後の仲間」のお話をしようと思います。

今回はその「前編」をお送りするのですが、その前に少し、当コラムの今後の方向性に関するお話をさせてください。あ、休載するとかではありません。

当コラムの今後の方向性について

手短に言うと、1回当たりの長さをこれまで比50%~60%くらいに短縮します(今回の内容を前後編制にしたのも、それによるところが大きいです)。

理由はいくつかありますが、最大の理由は「内容の長さによって当コラムが敬遠されているのではないか、読者の皆様にとって読むのが億劫になるような内容になっているのではないか」という疑念に今更行き着いたことにあります。

このコラムは「音楽(特に、いわゆる「懐メロ」と呼ばれるもの)の魅力を感じていただく」ことを目的として始まったわけで、それが別の事情で阻害されるのは遺憾である…というわけでの今回の決断です。ご了承いただきたく思います。

その分、内容はこれまで以上に磨きをかけてまいりますので、今後とも当コラム、並びに『粋』をご愛顧いただきたく思います。よろしくお願いします!!

夏の嫌疑、秋の魔術

…若干湿っぽくなっちゃいましたが、今週のお話に入りましょう!

事の発端は1980年の第19回・YAMAHAポピュラーソングコンテストと呼ばれる音楽祭で「きゅうてぃぱんちょす」というバンドが脚光を浴びたことでした。彼らのもとには多数のレーベルがデビューを持ちかけましたが、「自作曲のクオリティに納得できない」との理由で彼らはそれを悉く固辞します。

しかし、音楽プロデューサー・藤田浩一は彼らの才能にほれ込んでおり、何とか世に送り出さないといけないと考え、彼らに取引を持ち掛けます。内容は「(編曲家などを挟まない)純然たる自作曲を出さないという条件でのプロデュース」というもの。自作曲にこだわっていたとされる彼らに対してかなり大胆な賭けのように思える提案でしたが、彼らはこれを吞み、1983年にデビューします。その際に、彼らはバンド名を「最後の仲間」を意味する「OMEGA TRIBE」に改名したのです。加えて、 バンド名にボーカルを務めていた杉山清貴(きよたか)の名を冠します。

かくして門出を迎えた杉山清貴&OMEGA TRIBEのデビュー曲は「SUMMER SUSPICION」。直訳すると「夏の嫌疑」です。作詞を「悲しい色やね」(上田正樹)などで知られる康珍化(カン・チンファ)、作曲を「SEPTEMBER」(竹内まりや)などで知られる林哲司が務め、行方知れずの夏の恋を大人びた世界観で綴っています。

I can’t say! 夏が来て愛は乾くのさ 僕と誰を比べてるの?

募るジェラシーに灼かれて You can’t say! 醒めた分 つくる優しさが

もっと僕を 苦しめるよ My Summer-time Love Suspicion

「SUMMER SUSPICION」(1983年、作詞:康珍化、歌唱:杉山清貴&OMEGA TRIBE)

この曲は杉山の歌唱力に加え、林によるシティポップスの王道を征く洗練されたアーバンサウンドでも注目を集め、さらにCDデビューに先駆けて同年3月の「東京音楽祭」の日本代表の一翼を担ったことで、彼らの名は一躍広がります。

このまま勢いは続くのか? 同年秋に彼らが次なる一手として送り出したのは、「ASPHALT LADY」。「秋の魔術」をテーマとした楽曲です。

Shock! 君はASPHALT LADY きわどさが素敵な絵になる

Shock! 秋はイメージの魔術 軽くひねった腰のラインが視線を集めて 焦るよ…

「ASPHALT LADY」(1983年、作詞:康珍化、歌唱:杉山清貴&OMEGA TRIBE)

タイトルの「ASPHALT LADY」は康の造語で、「なかなか口説きオトせない女性」を指すそう。そんな女性に翻弄される男性の心情を様々なレトリックを以て綴った詞は、シティポップスとの相性は抜群。この2曲によって、OMEGA TRIBE=シティポップスのイメージが完全定着することとなります。

「SUMMER SUSPICION」も「ASPHALT LADY」も、夜間帯のドライブが映える仕上がりに
なっている。あわよくば外車で流したい。そう言う筆者はペーパードライバーの庶民派

サマーソングの旗手として終わる第1世代

そんなシティポップスの名手・OMEGA TRIBEは、「サマーソング」をシティポップスに取り込む試みを明確に行った初のグループと言えるかもしれません。当時のサマーソング界隈では茅ヶ崎発のモンスターバンド・サザンオールスターズの躍進もあってロックが主流路線。そんな中で、ロックとは別のベクトルでサマーソングを開拓しようとしたのが、OMEGA TRIBEだったのです。そんな彼らの取り組みが結実したのが、1985年の「ふたりの夏物語」でした。

キールのグラスを頬に当てて ホンキ?と笑った人魚(マーメイド)

Only you! 君にささやく ふたりの夏物語

Only you! 銀のビーチで 濡れた素肌抱きしめ 涙を海に返すのさ

Just Only You!

「ふたりの夏物語」(1985年、作詞:康珍化、歌唱:杉山清貴&OMEGA TRIBE)

「NEVER ENDING SUMMER」の傍題がつき、CMタイアップもついたこの楽曲は大ヒット、見事「OMEGA TRIBE=オシャレな夏」のイメージ定着に成功しました。

しかし、この頃から彼らは先述した契約(プロの作品で勝負)の中で 「楽曲を与えてもらって、それを売らなきゃいけない使命感」に対し葛藤するようになります。違和感というよりも疲弊に近いものだったようです。メンバー内でも意見が大きく割れる中、最終的に彼らの出した結論は「解散」でした。

しかし、プロデューサーの藤田は、活動継続を望んだメンバーの意向を斟酌し、2代目ボーカルを迎える形で「OMEGA TRIBE」の屋号を残す決断をします。杉山の次のボーカルには、ブラジル出身のカルロス・トシキが選ばれ、屋号も「1986 OMEGA TRIBE」に改名、かくしてOMEGA TRIBEの第2世代がはじまるのでした。

先に紹介した2曲にはない、夏の海を想起させる明るさ・爽やかさを醸しつつシティポップス特有の
格好良さは残したサウンドが売りだが、実はこの曲のメロディの作成時間は僅か3日なんだとか

ー後編に続くー

おわりに

というわけで、今回は「最後の仲間」前編でした。来週の後編では、カルロス・トシキ率いるOMEGA TRIBE第2世代のお話をお送りします。どうぞお楽しみに!

それでは、来週もこの時間にお会いしましょう~。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true

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村尾 佳祐

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