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粋スタッフの活動記

【THE・今夜も音楽三昧】#20「あの日の歌に寄す ONE WEEKDAY篇」

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皆様こんばんは。今週も「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いします。

今週は久しぶりに、このコラムの開始前から描いていた短篇エッセイっぽい音楽小噺「あの日の歌に寄す」を綴りたいと思います。ちょうどこのコラムも20回目を迎えましたし、初心を思い出す、という意味でも。何ですかそれは?という方は、以下に前回の「あの日の~」を提示しますので、是非ご参照ください。

それでは、今週も最後までお付き合いくださいね。

月曜日:月

世間一般には憂鬱と言われる月曜日には古典の授業がある。今読んでいるのは京都を舞台とした作品だ。ただ、浮世離れしたには珍しく、主人公の美形な貴族は月を見ながら憂いているという。

教授の解説は丁寧だし、分かりやすい。しかし、どこか暢気だ。別に睡魔を誘う類ではないが、せっかちな性分の自分には時折堪えるときもある。しかし、その話し方が、今日の物語にはどうも合っているように感じられる。悠久の時の流れを感じるというか、昔の情景を呼び起こすというか…

蒼い月が旅路を照らし 長い影に孤独を悟る

人の夢は浮かんで堕ちて されど赤い陽はまた昇る

「月」(1994年、作詞・歌詞:桑田佳祐)

やがて物語の貴公子は都を滔々と流れる川のほとりに立ち、運命を憂う歌を歌い、また住処へと去っていく。その場面を訥々と語る教授の声を聞きながら、なぜか人知れず泣けそうになってきた。理由は分からない。

振り返る故郷(ばしょ)はただ遠くなる

翔び慣れた夜もひとりじゃ辛い

君を見ました 月見る花に 泣けてきました 嗚呼…

「月」(1994年、作詞・歌詞:桑田佳祐)
夜に橋を歩くことがあれば、欄干から下を見てみると良い。そこに広がっているのは、
水面に反射する自然光と建物の明かりが織りなす、幻想的なカクテル光線だ

火曜日:FIRE! FIRE!

今日は最後にゼミが待っている。大学になると教授の授業を座ってひたすら聞く…というパターンが多い。別にそれが悪いとは思わないが、もう少し刺激が欲しくなる時もある。自分にとって、その刺激をくれるのはゼミだった。

そのゼミに、1人手強い同期がいる。信条は冷徹無比。隙の見えない理論武装で確実に論議の主導権を握りに行く。例え反論されようとお構いなし。的確に指摘の穴を見抜き、そこに突き刺さるカウンターを変幻自在に放ってくる。相手が主席の先輩だろうと喰らいつくガッツと度胸も兼ね備えている。はっきり言ってバケモノだ。そんな彼に唯一勝っているものがあるとするならば…それは「熱情」。

いつでもCoolになりたくないよ 熱いビートに打たれていたい
ブレーキなんてかからなくなる FIRE!

「FIRE! FIRE!」(1998年、作詞:小林和子、歌唱:Folder)

感情を以て論客として言葉を交わせるのは、もしかしたら大学時代が最後かもしれない。ならば少しくらい熱くなっても、お咎めはないのではないだろうか?

今日のテーマは比較的得意としている分野だ。どのような展開に転ぶか…楽しみだ。

Ride On My FIRE! Keep On, Ride On FIRE! Bang! Bang! Bang! Bang!

新しい花火を打ち上げよう 星の彼方へDreamin’ …Wow! Baby!!

Ride On My FIRE! もっともっとFIRE! Bang! Bang! Bang! Bang!

腕から伝わるこの感じ いい感じ どこまでも…Go!

「FIRE! FIRE!」(1998年、作詞:小林和子、歌唱:Folder)
炎というものは、見るものに二面性を感じさせる。触れたものを焼き払う力強さに加えて、
空気の中を龍のように形を変えて立ち昇るしなやかさを兼ね備え、そこに鮮烈な印象を残していく

水曜日:水星

今日の講義は午前中に集中していて、午後は完全オフだった。図書館で課題を片付けて建物を出ると、太陽の姿はなく、白と紺の間の色をした空が広がっている。腕時計を見ると、18時くらいになっていた。

せっかくの機会なので、飲んでから帰ろうかと思い立つ。ちょうど明日の午前中は全部空きコマだし、たまにはいいだろう。駅の入り口とは反対方向に歩き出す。学生街を少し南下すると、洒落た街並みが先ほどよりも深みを増した空に浮かんでいた。

煌めくネオン ゴミが光る街 老い知らぬ耳 信じてる証
チェックするニューソング ディスコは宇宙 ムスクの香りの君に夢中

「水星」(2013年、作詞・歌唱:Tofubeats)

どことなくアンダーグラウンドの空気を纏っていながら、決して陰鬱さを感じさせないこの通りが好きだった。そういう場所が似合うような人間になることは、自分にとって、一種の「大人になること」の答えだった。今、端から見た自分はどれくらいこの街に似合っているだろうか?と、路地のカーブミラーに映る自分自身に、柄でもなく問いかけてみる。

そろそろ目的の店は目の前だ。扉の前の鏡に広がる、さっきよりも暗い空に映ったなもなき青白い星を一瞥し、その扉を叩いた。

めくるめくミラーボール乗って水星にでも旅に出ようか

いつか見たその先に何があるというの?

きらきら光る星のはざまでふたりおどりあかしたら

もっと輝くところに君を連れて行くよ

「水星」(2013年、作詞・歌唱:Tofubeats)
レインボーカラーのネオンがキラキラと輝くカーディーラー。いわゆる「アメ車」と
呼ばれるクラシックカーがショーウィンドウにずらりと並ぶ様は、ここだけ時代が違うかのよう

木曜日:ワダツミの木

大学は3時間目からだが、朝早くに家を出た。電車の車窓からみえる、ある公園に行って見たかったからだ。

車窓から見えたその公園は、芝生広場に囲まれるように大きな樹が生えていた。その記憶を頼りに、最寄り駅周辺を歩くこと10分。その公園にたどり着いた。えも言われぬ生命力を周囲に放つその樹は、力強さだけではない、幻想的な何かを持っているように感じられた。

私の足が海の底を捉えて砂にふれたころ 長い髪は枝となって

やがて大きな花をつけました

ここにいるよ、あなたが迷わぬように

ここにいるよ、あなたが探さぬよう

「ワダツミの木」(2002年、作詞:上田現、歌唱:元ちとせ)

しばらくその樹を見ていると、初老の男性に声をかけられた。聞くと、公園の近所に住んでいらっしゃる方らしい。その樹を観に来たのか、と聞かれたので、そうですと答えると、ならば夜にも見に来た方が良いぞ、と教えてくれた。夜になるとまた違う顔を見せてくれるらしい。

それで、その日の授業が全て終わった後、もう一度公園に行ってみたのだが…なるほど、朝に言われた意味を理解した。その樹はちょうど月の通り道の前に育っていたのだ。月光に照らされるその大樹を前にした自分は、しゃべりを忘れた幼子のように、しばらく言葉を失っていたのだった。

星に花は照らされて 伸びゆく木は水の上

波よ、もし、聞こえるなら 少し、今 声をひそめて

「ワダツミの木」(2002年、作詞:上田現、歌唱:元ちとせ)
名古屋鉄道・前後駅(豊明市)の改札を出てすぐの場所にある時計塔は「きのっぴい」と
呼ばれている。前に立つと、いきなり「やあ!」とか声をかけられそうな錯覚に時折陥る…

金曜日:決戦は金曜日

今日は一週間最後の日…なのだが、羽を伸ばすために乗り越えなければならない試練がいくつかあった。

第1に、朝イチでいきなり小テストを受けなければならない。下手な点をとると追試が待っている。第2に、午後からの講義で全員の前での発表が待っている。こちらは別にペナルティはないが、しくじれば全学生の冷笑の目が待っている以上、ビシッと決めなければならない。もちろん、準備はどちらも万全であるが、それでも家を出る時には、いつもとは明らかに違う、妙な緊張感があった。

ところが、大学に近づけば近づくほど、なぜか自分がワクワクしていることに気がつく。自分はここまで戦闘狂ではなかったはずなんだが…。根拠の類は皆無だが、とにかくうまくいきそうな高揚感に包まれたのだ。こんな感覚は、入試ですらあった気がしないのだが。

ふくれた地下鉄が核心へ乗り込む 戦闘の準備はぬかりない

退がらない その手を離さない!

「決戦は金曜日」(1992年、作詞:吉田美和、歌唱:Dreams come true)

その時、ふと頭によぎったのが、先週の授業で同級生と交わしたちょっとした会話だった。彼は、来週の発表のことに震え上がる自分を見咎めて、こんな事を言っていたのだ。

「なーにビビってやがる。自分らしくやりやがれ。それでいいじゃん」

当時は特に刺さることもなく、なんとなく流したが、今になってはこの言葉が力強いこと力強いこと。高まる覇気の心地よさを感じながら、地下鉄を降りた。

今日はパーフェクトに終わらせて、最高の週末を過ごしてやろう。

少し気が多い私なりに泣いたり笑ったり 「私らしく」あるためにくり返した

気が多い私なりにまわって来た道 ひとり悔やむ週末に もう呑みこまれない

「決戦は金曜日」(1992年、作詞:吉田美和、歌唱:Dreams come true)
ホームに入線する地下鉄。名古屋市営地下鉄はいわゆる「駅メロ」が路線・方面ごとに異なり、
それぞれが異なる旅情をかき立てる。写真の桜通線・徳重方面なんかは特にオススメ

終わりに

と言うわけで、今週は久方ぶりの「あの日の歌に寄す」をお送りいたしました。最後まで読んでくださった方々、誠にありがとうございました。

この「THE・今夜も音楽三昧」は毎週金曜日にお送りしているわけですが、やっぱり金曜日って他の平日と比べてもワクワクしませんか?それは筆者だけでしょうか?

人は皆、それぞれの曜日にそれぞれの想いをかけて生きており、その背景にそれぞれのドラマを持っています。たまには、そんな「曜日のドラマ」に想いを馳せながら一週間を生きてみるのも、悪くはないかもしれませんね。

それでは、また来週もこの時間にお会いしましょう〜。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true

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村尾 佳祐

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