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コラム

【THE・今夜も音楽三昧】#16「デビュー(後編)」

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緑が映える季節ですね。サムネイルもフレッシュグリーンに新調です

皆様こんばんは。約1か月ぶりの「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました(この1か月間何をやっていたかについては以下の記事からどうぞ)。

今週からは再び連載をしてまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。

さて、前回は「デビュー(前編)」と題し、他の歌手や音楽家の作品でデビューを果たした歌手のお話でした。そして、今回は後編として、自作の作品で音楽界の荒海に勝負をかけた人々のお話をしようと思います。前編の内容なんか覚えてないぜ!!という方はこちらからご確認ください。

それでは後編に参りましょう。本日も最後までお付き合いください。

自虐するほど売れなくたって…

最初に紹介するのは、「Precious Junk」という曲です。

この曲は1995年に発売され、ドラマ「王様のレストラン」の主題歌になるなどタイアップもついて期待されたのですが…当時のCD売り上げは7万枚程度。当時はまだCDのミリオンヒットが10枚単位/年で出ていた時代であると考えると、「爆死」と言わざるを得ないレベルの不振となってしまいます。

ではその歌唱者はあっけなくフェードアウトしていったのか…と言われると、そんなことはなかった…というかむしろその正反対。彼はその後、伸びやかな声を武器に数々のヒット作を連発し、音楽シーンにその名を刻みつけていったのです。その名は……平井堅。

いつもこのままじゃ夢さえも逃げて行く 凍えた想い溶かしたい

いつかこの僕を飛び越えられたなら 行き交う靴音に流されず

歩いて行くことが 出来るだろう

「Precious Junk」(1995年、作詞・歌唱:平井堅)

曲調は後の「POP STAR」などに続く系譜を感じさせるポップス路線。自身も歌手として活躍するジョー・リノイエによるシティポップ・テイストの編曲も聞いており、今聴いてもそこまでの古臭さは感じない程度の仕上がりになっているのですが…。

ちなみに、この曲の爆死ぶりは、平井本人もライブで自虐ネタとして使っているほどだそうですが、その後の平井氏のブレイクに付随して、この曲の累計売上も10万枚の大台に乗るほどには伸ばしています。

「Precious junk」は英語で「大切ながらくた」の意。例えば、こういう小さな
引き出しの中にあるような、実用性はないけど捨てられないもののことを指すのだろう

ファンを掴んだ「最初の3連発」

さて、平井が「precious junk」でデビューしたのと同じ1995年。音楽プロデューサーとして既にその名を知られる存在となっていた小林武史は、ある大勝負に出ようとしていました。自身がスカウトした女性ボーカル・AKKOと共にユニットを結成し、デビューしようとしていたのです。そうして結成されたユニットが「My little lover」でした。

小林は、AKKO特有の伸びやかかつ優しさのある歌声が存分に発揮されるような楽曲を自分で作ることになります。そうして生み出されたのが、デビュー作の「Man & Woman」です。

悲しみのため息 ひとり身の切なさ

抱きしめたい 抱きしめたいから Man & Woman

「愛してる 愛してる」って言っても 「好きだから 好きだから」って言っても

きっと言葉だけじゃだめだよ Man & Woman いつかは Hey Hey Hey!

「Man & Woman」(1995年、作詞:小林武史、歌唱:My little lover)

この曲はサウンド面に比較的特徴的なポイントがいくつかあります。音符の過密なポイントとそうではないポイントが短い周期で繰り返されている点やBメロは超低音からスタートするかと思えば間奏では超高音+過密地帯が存在するなど、ブレなく歌うにはコツのいる部分が多いのです。そして、それをものにしてしまうAKKOの歌の魅力がしっかりと伝わるような構築になっていました。

さらに、同年のMy little loverは2作目の「白いカイト」もヒットさせ、さらに3作目には150万枚以上を売り上げるメガトンヒットとなった超名曲「Hello,again ~昔からある場所~」を送り出し、ファンの心をがっちりと掴みました。肝心のスタートダッシュで大成功を収めた彼女たちは盤石な支持基盤を築くことに成功したのです。

この3連発は舞台設定や連想させる情景が三者三様なのも秀逸なポイント。 「Man&Woman」は
お洒落な都会、「白いカイト」は晴天の海岸沿い、「Hello,again」は雨の街の景色が見える

7年越しの一大タイアップ

毎年、オリンピックイヤーになると、誰が五輪特番のテーマソングを歌うのかが度々注目の的になります。昨年の東京五輪ではNHKが嵐の「カイト」、残りの民放放送局は57年ぶりの日本開催ということで結託し、全テレビ局が桑田佳祐の「SMILE~晴れ渡る空のように~」を使いました。

さて、そんな東京五輪の1つ前に日本で行われた五輪である長野冬季五輪で、NHKが特番テーマソングとして選択したのは「ヒバリのこころ」という曲でした。実はこの選曲、かなり意外性のあるものでした。

僕はこれから強く生きていこう 行く手を阻む壁がいくつあっても

両手でしっかり君を抱きしめたい 涙がこぼれそうさ ヒバリのこころ

「ヒバリのこころ」(1991年、作詞:草野正宗、歌唱:スピッツ)

実はこの歌はいわゆる「新曲」ではなく、長野五輪の7年前に発売されていた楽曲でした。歌っているのは、後に「ロビンソン」や「空も飛べるはず」などを大ヒットさせたスピッツ。彼らにとってはデビューシングルでもありました。

エレキギターを主軸とする疾走感のあるイントロから、そのままのテンションで歌われるAメロ、そしてそこから若干テンポを落としたブルース調のサビに進んでいく構成となっており、Bメロすらない単純構造ながら作りこみを感じさせるサウンドになっています。

ちなみに、ヒバリは漢字で「天子(王様)を告げる」と書き、さらに冬になると本州に飛来し暖かくなると去るという習性を持つ鳥です。冬の王者を決める冬季五輪関連でこの曲が選ばれたのは、そういった点も関係しているのかもしれませんね。

名古屋某所で出くわした鳩の群れ。街中で見る鳥と言えばハトやカラスという人も多いのでは?
ちなみに、岐阜・三重・静岡にはヒバリが市鳥・町鳥になっている自治体があるが、愛知にはない

タナトスの誘惑

次は時代をぐっと進めて、2019年です。この年代とタイトルで何のことを指しているかわかる方は結構な音楽好きなのではないでしょうか。

次に取り上げるのは今をときめく人気音楽グループ・YOASOBI。彼女たちのデビュー曲は、この超有名曲!!

いつだってチックタックと鳴る世界で何度だってさ

触れる心無い言葉うるさい声に 涙が零れそうでも

ありきたりな喜び きっと二人なら見つけられる 

「夜に駆ける」(2019年、作詞:Ayase、歌唱:YOASOBI)

そう、「夜に駆ける」。星野舞夜の小説「タナトスの誘惑」をモチーフにした作品で、この曲の成功を以て彼女達の「小説の世界観を歌う」というコンセプトが支持を集める契機となりました。サウンド面では比較的長めの音符が多い中でもBメロの連打多めの譜面がアクセントとなっており、聴きごたえがありますよね。

ところでYOASOBIの楽曲は多くが「サビ2回+最後は転調」という展開になっていますが、それはこの楽曲からすでに取り入れられていました。まさに彼女たちの原点を感じさせますね。

ネオンがキラキラと煌めく大都会の夜景もいいけれど、たまには
工場地帯のこういうメカメカした硬派な夜景も悪くない。海に反射する鉄塔に味がある

3年2か月の過酷な一人旅

本日最後に紹介する楽曲は、デビュー作から自らのキャラを大爆発させて勝負を挑んだバンドのお話です。

平成元年にデビューし、強烈な個性を持った数々のヒット曲で根強いファンを多数得たロックバンド・ユニコーン。そのボーカルを「イージュー★ライダー」や「さすらい」のヒットで知られる奥田民生が務めたことでも有名ですが、そんな彼らはデビュー曲からワールド全開でした。タイトルは「大迷惑」。

突然忍び寄る怪しい係長 悪魔のプレゼント

無理矢理 3年2ヶ月の過酷な一人旅!

この悲しみを どうすりゃいいの? 誰が僕を救ってくれるの?

僕がロミオ 君がジュリエット コイツは正に大迷惑!!

「大迷惑」(1989年、作詞:奥田民生、歌唱:ユニコーン)

新婚早々、マイホームも購入したのに単身赴任を言い渡されたサラリーマンの悲哀を歌った作品ですが、クラシック系のサウンドをロックと融合させ、オペラのようなサウンド構成になっているのが特徴です。PVもそこに着目した内容となっており、大きなホールで演奏するオーケストラを背に奥田が時に直立不動で、派手なムーブを交えながら歌うという構図になっています。

ちなみにこの曲には「元ネタ」があり、所属事務所で懇意にしてくれていた担当者が飛ばされたことから発想を得たのだそうです。結果的にタイアップはつかなかったものの、圧倒的インパクトでファンを多数獲得したユニコーンはその後数年にわたり、個性派バンドとして盤石の地位を築いていくことになります。

特に1時限目から授業がある時には、朝の列車の混雑が凄まじい。もしかしたら、その大量の
乗客の中には、今の仕事にうんざりしている人も、案外いるのかもしれない…

おわりに

というわけで、本日は「自作曲でのデビュー」をテーマにお送りしました。来週以降はこれまで通り金曜19時に公開してまいりますので、また、素敵な音楽との出会いを求めて読んでくださればと思います。

それでは、また来週お会いしましょう~。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true

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村尾 佳祐

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