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コラム

【THE・今夜も音楽三昧】#12「桜・桜もいいけれど」

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皆様こんばんは。「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いします。

ふと気が付けば、最高気温が2桁の日も珍しくはなくなり、いよいよ春の足音が大きくなってまいりました。寒がりの方にとっては歓喜の瞬間が、花粉症持ちの方にとっては悲痛の瞬間が、着々と近づいております。

そんなわけで、春が近づいてくると、旬を迎える春の良曲が数多くありますね。ただ、街行く人たちに「春の曲と言えば」というと、やれ「桜」だの、やれ「さくら」だの、やれ「SAKURA」だの…と、桜の歌が圧倒的多数を占めるのが想像に難くありませんね…。それ自体は決して悪いことではないでしょう。桜を愛でる精神というのはジャパニーズ四季愛の最たるものですからね。しかし、桜の名前を冠さずとも、良曲はたくさんあると思いませんか?

ということで、今夜のテーマは「春ソング(桜系除く)」です。よろしければ最後までお付き合いくださいね。

始まりを歌う「春の歌」

本日最初は、「春の歌」を取り上げます。分類ではなく、これがタイトルです。

重い足でぬかるむ道を来た トゲのある藪をかき分けてきた

食べられそうな全てを食べた

「春の歌」(2005年、作詞:草野正宗、歌唱:スピッツ)

歌っているのはスピッツ。ちゃっかりこの歌がちょうど30枚目のシングルです。同一フレーズを繰り返すAメロ→リズムに変化が起こるBメロ→盛り上がるサビ、というメロディの構造もさることながら、歌詞が秀逸なのです。

実はこの曲、歌詞中に「春の歌」というタイトルは出てくるものの、それ以外の部分には「春」という言葉はおろか、それを想起させるような自然物などすらも出てこないのです。でも、春っぽさは感じさせてくれます。なぜか?

それは、この歌の中で「春」は「始まり」を指す概念として使われており、それが我々の心の中の「春」の像と重なって解釈されるからなのです。Bメロ→サビの歌詞を読むとそれがよくわかります。

「どうでもいい」とかそんな言葉で汚れた心 今 放て!

春の歌 愛と希望より前に響く 聞こえるか? 遠い空に映る君にも

「春の歌」(2005年、作詞:草野正宗、歌唱:スピッツ)

この歌詞が指図するものは、投げやりになることもありながら、「春の歌」が響く中で心を解き放ち新たなスタートを切ろうとする私(視点人物)。その世界観が、学期初めなどに象徴される「春=スタート」という等式にぴったりと嵌り、聞き手に春を感じさせる、そんな仕上がりになっているのではないでしょうか。

都心へと走っていく電車。筆者自身も大学生になって電車通学が当たり前になった。
車窓から見える景色のちょっとした変化で季節の流れを感じさせられる瞬間もしばしば

穏やからしからぬ

春と聞くと、穏やかな陽気に包まれた、どこかのんびりとした空気感を感じる人も多いのではないでしょうか。かくいう筆者もその一人で、青い空、舞うサクラ、若草色の芝生…といった景色がそれっぽいな、と浮かんできます。

その一方で、気象用語の一つに「春の嵐」という言葉があります。メイ・ストームとも呼ばれ、 日本付近に北から入り込んでくる冷たい空気と南から流れ込む暖かい空気の衝突によって低気圧が急速に発達した結果、台風並みの暴風が起こる気象現象のことです。さらに北陸地方以北では猛吹雪、海岸線では高波まで発生するという、なかなか強烈な荒天がもたらされます。そんな「春の嵐」ですが、これを題材にした歌もあったりするのです…

突然の雷が 酔心地・春の宵に このままじゃ夜明けまで野ざらし、ずぶ濡れ

春の雷に白い花が散り 桜・花吹雪 風に消えてゆく

「春雷」(1979年、作詞:山木康世、歌唱:ふきのとう)

タイトルは「春雷」。 冬眠していた地中の虫たちが雷鳴に驚いて目覚めるという意味から「虫出しの雷」とも呼ばれる、立春から立夏にかけて轟く雷のことです。歌っているのはデビュー作「白い冬」(1974年)の大ヒットでフォークブームの火付け役の一翼を担い、以降も息の長い活動を続けたフォークデュオ・ふきのとう。 この歌はキャリアが中盤に差し掛かろうかという1979年の作品です。

嵐がテーマの作品とあってか、この手のフォークソングとしては比較的テンポが速かったりイントロでエレキを際立たせたりと、この曲ならではのサウンドが目立ちます。歌詞はとある老人が視点人物に設定されており、旧知の友人と会い、別れた直後に春の嵐の直撃を受けるなかで友人の身や世の無常に思いを馳せる…というもの。クールな哀愁が漂っており、曲調とのシナジーも絶妙です。

声なき花の姿人は何を思うだろう? まして散りゆく 姿 この世の運命を

春の雷に散るな 今すぐに 桜・花吹雪 命つづくまで

「春雷」(1979年、作詞:山木康世、歌唱:ふきのとう)

歌詞は最後まで渋さが光るフレーズが続き、一種の不穏さ・荒々しさを纏っています。その 一方で、メロディに目をやると、途中で転調が施されていたり終わり方がフェードアウトになっていて天気が回復していったことを想起させる締め方になっていたりと、光に向かっていくような仕上がりとなっており、味わい深さを感じさせてくれる、そんな一曲になっています。

この冬は愛知でもやたらと降雪が多かった。最近はかなり暖かくなってきてはいるものの、
今後、寒暖差が20度近くに及ぶ日も出てくるとか。まさか今月も雪が降ったりするのだろうか…

風流な和テイストで感じる春の慶び

先ほどの「春雷」の導入でも触れましたが、春と言えばどことなく明るい季節、心がうきうきするような季節とのイメージがある方も多いことと思います。人間は別に冬眠する生き物ではありませんが、それこそ眠りから覚めた時のような爽快感が暖かな陽気に乗って感じられる季節ですね。春ソングに関しても同じようなことが言え、明るさが前面に出た歌が結構多いです。が、そういったものにはやはり例外がつきものなわけで…

淡き光立つ 俄雨 いとし面影の沈丁花

溢るる涙の蕾から ひとつ ひとつ香り始める

「春よ、来い」(1994年、作詞・歌唱:松任谷由実)

こちら、1994年に発表された「春よ、来い」もそんな例外の一つ。同年前期のNHK連続テレビ小説のためにニューミュージック界の超大物・ユーミンが書き下ろした言わずと知れた名曲で、今年の北京冬季五輪ではフィギュアスケートのエキシビジョンで日本が誇るスーパースター・羽生結弦選手がこの曲で演技を行ったことも話題となりました。

この曲はしっとりとした和テイストを軸に展開され、歌詞はどこか古文に通ずるような、風流な言葉遣いが続きます。メロディについても曲を追うごとに楽器やドラムパターンを変えて変化をうまく出しつつ全体として和風な落ち着きを保ったまま進行しており、完成度は極めて高いといっていいでしょう。

春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まるとき 夢をくれし君の眼差しが肩を抱く

夢よ 浅き夢よ 私はここにいます 君を想いながらひとり歩いています

流るる雨のごとく 流るる花のごとく

「春よ、来い」(1994年、作詞・歌唱:松任谷由実)
この歌の伴奏はピアノが中心で、和楽器の要素はほぼない。にも関わらず、「和の景色」が脳裏に
容易く像を結び、庭園や竹林といった「和を感じる空間」で聴きたくなる力が、この歌にはある

ラブソングに見えますが、実は…

本日最後に紹介する歌は、「ある目的のために」書かれている歌です。ただし、その目的はあまり表には見えなくなっています。

ひとり季節はずれの海を見つめて 時の過ぎゆくままに募る想い出

青い波の打ち寄せる 誰もいない砂浜で

夕陽浴びてカモメが 恋の終わりを告げる 嗚呼…

「彩~Aja~」(2004年、作詞:桑田佳祐、歌唱:サザンオールスターズ)

こちらは2004年の「彩~Aja~」。このコラムでは常連の一角となりつつあるサザンオールスターズの楽曲です。彼らはこの歌が出される前年に約2年ほど続いた活動休止期間(ちなみに、この間にメンバーが1名脱退して現在の5人体制になりました)を終えています。再始動後最初のシングルは彼らが最も得意とする夏ソング「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」(2003年)であり、次はどんな歌が出るのか…と音楽好き達が期待を寄せる中で発表されたのがこの歌でした。Ajaはインドネシア語で「永遠」という意味です。

この楽曲はサザンにとって数少ない「春をテーマにした」と明言されている楽曲の一つで、その言葉の通り、ミディアムテンポのメロディに乗せて淡い恋を歌う、春の柔らかな日差しを想起させる仕上がりになっています。 ただ、どうやらこの楽曲はただのラブソングとして作られたわけではないようです。

それが分かるのが、この歌が収録された2枚組のアルバム「KILLER STREET」(2005年)に同梱されている、サザンのリーダー・桑田佳祐によるセルフライナーノーツ。その「彩~Aja~」の項目には「歌詞は(この歌が出る少し前に世を去った)亡き父に捧ぐ」との一言が。つまりこの曲は元々「鎮魂歌」として作られたようなのです。

確かにそれを聞いてから歌詞を読むと恋の終わりと故人との別れを対応させていると思しきフレーズがあることが分かるのですが、そうとは知らなければ気づくのは難しいように思われます。真の目的を知っている人と知らない人で解釈が分かれるところも、この歌の持ち味になっているのかもしれませんね。

夢の中へ僕を連れてって 綺麗な花咲く場所へ

黄昏も I’m alright 路傍の影は Blue

夢の中でだけどそばにいて 今でも忘れ得ぬ恋なら

憧れのLove is alright もう二度と逢えないと 知りながら 涙 …

「彩~Aja~」(2004年、作詞:桑田佳祐、歌唱:サザンオールスターズ)
この歌は、海(1番Aメロ)、花園(1番サビ)、星空(2番Aメロ)、青空(大サビ)と、描かれる情景の
情報量や変化が結構多い。それらを活かしつつも、一定の秩序の中で納める技巧は流石の一言

おわりに

というわけで、今回は「桜以外の春ソング」をテーマにお送りしました。

『粋』のスタッフが多数在籍する名古屋大学でも一昨日に一般入試前期日程の合格発表があり、本格的に春の訪れを感じるようになってきました。そういった気配を楽しみながら、たまには桜にとらわれずに春ソングを嗜んでみるのも、悪くはないのではないでしょうか?

それでは、また来週もこの時間にお会いしましょう~。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true

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村尾 佳祐

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