
皆様こんばんは。
普段は毎週金曜日の19時に、邦楽に関するさまざまなお話をお送りしております、粋web限定コラム「THE・今夜も音楽三昧」でございますが、本日は「特別篇」ということで月曜日ですがお送りしてまいります。何卒、よろしくお願いしますね。
さて、本日は2月14日です。バレンタインデーでございます。今日、どこかで誰かにチョコレートを渡したり、誰かから受け取ったりした方もいるでしょうか?一部では「製菓会社の巧妙なPR政策じゃないか!」という声も聞きますが、そうやって目くじらを立てるのも、まあ野暮というものでしょう。たまにはその掌の上で転がされるのを楽しんでもいいではありませんか。
ということで、今回の「THE・今夜も音楽三昧 特別篇」は、粋スタッフ一同からのバレンタインプレゼントとして、粋スタッフが実際に選んだ一押しのラブソングについてのお話をお送りしたいと思います。どうぞ最後までお楽しみください。
その1「キラキラ」
遠い遠い見たことのない 知らない街に行ったとしても
あたしはこうしてずっとここを離れずにいるよ
羽が生えたことも 深爪した事も シルバーリングが黒くなったこと
帰ってきたら話すね その前にこの世がなくなっちゃってたら
風になってでもあなたを待ってる
「キラキラ」(2005年、作詞・歌唱:aiko)
1曲目は「キラキラ」。ラブソングの名手として名高いaikoが2005年に発表した作品で、彼女の20代最後のシングルでもあります。店舗こそそこまで早くはないものの躍動感を感じさせるサウンドが特徴的で、全体的に長い音が多くのびやかな歌唱を楽しむことができる仕上がりにもなっています。歌詞は恋人の帰りを待つ女性の視点から描かれていますが、解釈に幅のあるフレーズが多く、人によって違う表情をのぞかせてくれる仕上がりになっています。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
何か環境が変わるときでも、ただ続いていく日常でも、ちょっと寂しい中でも大切に したいものがあって…っていう気持ちで聴けると思う。「シルバーリングが黒くなったこと」とか、 どう解釈すればいいのか友達と議論するのも楽しい(笑)

感じられる。そういうまったりとした時間も時には大切にしたいもの
その2「幸福なわがまま」
君の日々に降り注ぐ憂鬱には陽だまりの毛布で包んであげたい
まっすぐな無邪気さをずっとなくさないでね
月明かりだけが灯る狭い部屋 君の面影を手でなぞりながら小さく呟いた
「あの時触れてたら…」
「幸福なわがまま」(2021年、作詞:みあ、歌唱:三月のパンタシア)
続いて紹介するのは「幸福なわがまま」。テレビ朝日系列で放送されたドラマ「あのときキスしておけば」の主題歌として書き下ろされた楽曲で、全体的にポップな世界観が広がるMVでも話題を集めました。歌詞は想い人に向けたストレートな感情表現が多い構成となっており、聞き手を歌の世界に引き込ませてくれる力があります。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
前やってたドラマ(=あのときキスしておけば)の主題歌で、最近ハマってます!可愛らしい曲で、明るい気持ちになりつつ、そのドラマのことを思い出してああ、ああだったなってなる(笑)

我々は、「嗚呼、あの時こうしていれば…」という葛藤の中をいつだって彷徨い続ける
その3「寝癖」
君の髪が白くなってもそばにいたいと思ってるよ
あたし髪が白くなる位ずっとそばにいたいよ
気付いてない振りの君に気付いてない振りをして
素っ気ない態度で言ってしまいそうな本当の気持ちを誤魔化す
「寝癖」(2014年、作詞:尾崎世界観、歌唱:クリープハイプ)
続いて紹介するのは「寝癖」。クリープハイプが2014年に発表した楽曲で、ボーカル・尾崎世界観氏の独特なハイトーンボイスが癖になるアップテンポなナンバーですが、その歌詞はどこか切なさを誘う内容になっており、彼女の目線から見た関係性が緻密に描写されています。ブレイク前夜の高畑充希がPVで視点人物を演じたことでも有名な作品。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
歌詞は多分、割と長いこと付き合っている男性に対する女の子の気持ちを表現しているものだと思います。 気に入ってもらう為の仕草をしたり、天然のフリをしたりして、可愛く振る舞う女性は、彼の気持ちが 遠のいてしまっていることに薄々気づきながらも、気づかないふりをして、また昔みたいに好きになって もらおうと頑張っている。そんな女の子の細かな心理を、「寝癖」をテーマにして、あえて遠回しに 表していて、すごく愛らしく、悲しい曲です。愛や恋を率直に表現しないところが 尾崎世界観らしくて推しポイントです!

見える一見ありふれた景色は、いったいいくつの非日常的な側面を持つのだろうか
その4「Fragile」
こんなにこんなに 君を好きになって 本当に本当にウレシイから
たとえば この先くじけてしまっても にぎりしめたその手を もう離さない
「Fragile」(2001年、作詞:持田香織、歌唱:Every little thing)
続いては「Fragile」。恋愛バラエティ番組の先駆けと名高いフジテレビ系列の「あいのり」から誕生した楽曲です。誰かを愛するということの切なさと温かさをひしひしと感じられる丁寧な詞が聞く者を引き込みます。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
ELTと言えば失恋ソングである「Time goes by」(1998年)を思い浮かべる方も多いと思います。この曲、サウンド的には「Time goes by」に結構似ていますよね。ただ、そんな切ないサウンドでも希望的観測のある歌詞を乗せるとここまで映えるんだというのを、是非聞いて感じてほしいなと思います。

ただ、歌詞の内容と反してカップルの間柄は割とギスギスしてしまっているのだが…
その5「In my arms tonight」
声を聴かせて! 熱く見つめて! 揺れる心に 秋の気配が近づくわ
夢を見させて! 時間を止めて! 一人占めしたいの
わかってほしい Let me hold you! In my arms tonight
「In my arms tonight」(1992年、作詞:坂井泉水、歌唱:ZARD)
続いての楽曲は「In my arms tonight」。今は亡き平成の歌姫・坂井泉水を擁する音楽ユニット・ZARDの初期のナンバーで、坂井女史本人もインタビューで「自分の楽曲の中でも特にお気に入り」であると公言した一曲です。ビーイングサウンド(芸能事務所・ビーイングに所属するアーティストによる音楽のこと。ロック色の多いサウンドが特徴)に乗せて綴られるのは絶妙な距離感にいる二人の描写。ZARDが結成30周年を迎えた昨年には、トリビュートバンドの「SARD UNDERGROUND」によるカバー版も登場しています。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
ZARD史上でも屈指の「甘い」ナンバー。ロックなメロディ+繊細な歌詞+伸びやかな歌唱のバランスが取れている、隠れた名作だと思う。

ラブソングなのだが、ドラマの内容は学校内の闇を描写した過激かつ壮絶なものだったという
その6「冬がはじまるよ」
八月の君の誕生日 半袖と長袖のシャツをプレゼントしたのは
今年の冬もそれからもずっと僕らが一緒に過ごせるためのおまじない
「冬がはじまるよ」(1991年、作詞・歌唱: 槇原敬之)
続いてご紹介するのは「冬がはじまるよ」。カズンの「冬のファンタジー」(1995年)やDual dreamの「winter kiss」(1994年)など、数多くの冬ソングを輩出したサッポロビール「冬物語」のCMから生まれた楽曲群の一つで、2007年にはEvery little thingが「恋をしている」のB面としてカバーしたことでも話題を呼びました。歌詞に登場する二人の描写に思わず頬が緩んだ方も多いのではないでしょうか?
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
これからもずっと一緒にいるために半袖と長袖のシャツプレゼントしちゃうの可愛すぎません…? 歌詞良すぎなので1度見てみてほしいです!

空気に吹かれながら見るからこそ、飾られたカラフルな光は幻想的な煌めきに見える
その7「POP STAR」
君に出会えた喜びと君に会えない淋しさの両方を手に入れて恋は走り出す
空も飛べない僕だけど 孤独を謳う夜だけど その頬に微笑みを与えられたなら
初めて君を抱きしめた瞬間に神様が僕に下した使命は「キミだけのヒーロー」
「POP STAR」(2005年、作詞・歌唱:平井堅)
次に紹介する楽曲は「POP STAR」。2005年第4クールの月9ドラマだった「危険なアネキ」の主題歌として書き下ろされた楽曲で、児童向け番組を連想させるMVも印象的なナンバーです。この楽曲のヒットにより、バラード曲のヒットが多かった平井は新たな境地をつかみ取りました。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
「POP STAR」の名前に恥じないポップス全振りのサウンドもさることながら、詞がかなりいい。サビもそうだけど、ほかのパートの詞もストレートさと洗練をうまくマッチングさせながら恋の感情を丁寧に綴り上げている印象があります!

ストレートに断言する大サビ直前の歌詞。これに勇気づけられた人も多いのではないだろうか
その8「Shake My Heart」
昨日までのこと 明日からのこと Always どんな日々だって
楽しめるはずだから Boogieな夢を見て 吹き抜ける風になる
「Shake My Heart」(2010年、作詞・歌唱:YUI)
続いては、YUIの「Shake My Heart」。その歌詞は英語交じりだったり航海を想起させるフレーズがあったりと、ずいぶんと明るいものになっていますが、サウンドはアコースティックギターを主体にしたミディアムテンポの伸びやかなもので、そのギャップが印象的な仕上がりです。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
郷愁溢れるメロディーがたまらん!

この歌には航海を連想させる歌詞がちらほら。今も昔も、恋愛と航海には近しいものがある
その9「陽だまり」
歩き出せばこの背中を追いかけてついてきてほしい
ああ 僕は君一人のためだけの独りぼっちさ
ひらひら花びらの舞う春の午後には 祈りを誓いに変えるよ
二人で 陽だまりの中 光集め 優しさを分かち合えるさ
一番大事なこと 忘れずに 輝いていてほしいよ
「陽だまり」(1987年、作詞・歌唱:村下孝蔵)
続いてお送りするのは「陽だまり」。「るーみっく・わーるど」と呼ばれる独自の世界線で人気を博す漫画家・高橋留美子の代表作の一つ「めぞん一刻」がアニメ化された際に主題歌として書き下ろされた曲です。一見不器用にも思える男性の心情を四季折々の美しい景色に織り交ぜて歌った歌詞で、アニメソングとしてもフォークソングとしても愛された稀有な歌です。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
サウンドもよいが、歌詞を一度じっくりと呼んでほしい一曲。「幸せになりたい」という望みから「あの人が幸せになりますように」という祈り、さらに「幸せにしてみせる」という誓いへと移り変わるサビの歌詞、それに「一番大事なこと忘れずに輝いていてほしいよ」という締めの言葉。どれを取っても洗練されている名曲だと思います。

村下氏の楽曲も、「めぞん一刻」も、その衝動に対してはかなり有効な解を示してくれるのだ
その10「宇宙飛行士からの手紙」
死ぬまでなんて嘘みたいな事を 本気で思うのは
生きてる君に 僕はこうして出会えたんだから
そしていつか星になって また一人になるから
笑い合った今はきっと 後ろから照らしてくれるから
「宇宙飛行士への手紙」(2010年、 作詞:藤原基央、歌唱:BUMP OF CHICKEN)
続いては「宇宙飛行士からの手紙」。2010年にBUMP OF CHICKENによって書き下ろされた楽曲です。サウンド的には「プラネタリウム」(2005年)などを想起させる4つ打ちのミディアムテンポで、詞的なフレーズが随所にちりばめられた歌詞が独特の世界観を築き上げています。
この曲を選んでくれた粋スタッフの一押しポイント
歌詞が秀逸。とにかく表現が多彩で、個人的に「笑い合った今はきっと後ろから照らしてくれるから」という部分が好きです

我々にとって最も身近に宇宙や天文を感じる場なのかもしれない
おわりに
というわけで、今回は特別篇ということで、粋スタッフの一押しのラブソングのお話でした。せっかくのバレンタインの夜です、是非今夜はラブソングを聞いて過ごしてみませんか…なんていうのはちょっと気障が過ぎますかね?
この「THE・今夜は音楽三昧」は、普段は毎週金曜日の19時に更新している粋web限定のコラムです。以下に最新回のURLを貼っておきますので、まだの方はぜひこちらもどうぞ。もちろん今週の金曜日にも更新がありますので、そちらもお楽しみに。
それでは、また次回にお会いしましょう~。
作者よりお知らせ
当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。
https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0