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コラム

【THE・今夜も音楽三昧】#8「声に出さずとも読みたい日本歌謡」

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皆様こんばんは。「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いします。

今日は2月11日。「建国記念日」という祝日でしたね。まあ、多くの大学生はこのころにはもう期末が決着して春休みに入っているようですが(まだの方々もあとひと踏ん張り…のはず。がんばりましょう!)。

日本がこの日を建国記念日に制定しているのは、かの「日本書紀」に理由があります。そこには、日本最初の皇族とされている神武天皇が「辛酉年春正月庚辰朔に即位」したと書いてあり、これをグレゴリオ暦(要するに西暦)に換算すると紀元前660年2月11日に当たるので、今日が建国記念日になっているわけですね。

そんな日に公開される今回は、「読む日本歌謡」をテーマに、邦楽における日本語の表現についてお話をしていこうと思います。本日も最後までお付き合いくださいね。

韻を読む

フレーズの末尾を揃える、レトリックの中でも定番パターンの一つ。特に曲のリフレイン(同じフレーズの繰り返し)と合わせて用いられることが多いです。

君とのラブストーリー それは予想通り いざ始まればひとり芝居だ

ずっとそばにいたって 結局ただの観客だ

感情のないアイムソーリー それはいつも通り 慣れてしまえば悪くはないけど

君とのロマンスは人生柄 続きはしないことを知った

「Pretender」(2019年、作詞:藤原聡、歌唱:Official髭男dism)

モテない できない 言えそーもない このチンケなオイラに 愛をちょーだい

逢えない 抱けない できそーもない このザンゲを神様 聞いてちょーだい

「ガッツだぜ!!」(1995年、作詞: トータス松本、歌唱:ウルフルズ )

生まれく抒情詩(せりふ)とは青き星の挿話 夏の旋律(しらべ)とは 愛の言霊

「愛の言霊~Spiritual message~」(1996年、作詞:桑田佳祐、歌唱:サザンオールスターズ)
夏の思い 手をつない 歩いた海岸線 車乗り込ん 向かったあの夏の日
「夏の思い出」(2003年、作詞・歌唱:ケツメイシ)

対句を読む

対照的な概念を書く際に双方の表現を似せたうえで連続させるレトリック。古典読解の際にお世話になるケースが多いですが、現代文でも当然通用する技術です。先述した韻と組み合わされることもしばしば。

見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる 本当の声聞かせておくれよ

「TRAIN-TRAIN」(1988年、作詞:真島昌利、歌唱:THE BLUE HEARTS)

幸せになれるよ私となら 未来を誓えるよあなたとなら

二人の距離は もつれた赤い糸 ほどけない

「幸せになりたい」(1995年、作詞:広瀬香美、歌唱:内田有紀)

夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない

その二つがちょうど交わる場所に心が望む未来がある

「約束の場所」(2006年、 作詞:槇原敬之、歌唱:CHEMISTRY)
サラバ愛しき人よ サラバ虚しき愛よ ロマンを乗せて走る 光る三艘の船
「運命船サラバ号出発」(1999年、作詞:川畑アキラ、歌唱:ザ・コブラツイスターズ)

擬人を読む

人でないものに人のふるまいをさせる擬人は、ある意味鉄板ともいえるレトリックですが、それ故に自然に差し込むには腕が問われます。

嗚呼 夏休みもあと少しで終わっちゃうから 嗚呼 太陽と月 仲良くして

嬉しくって 寂しくって 喧嘩もいろいろしたね 二人の 秘密の基地の中

「Secret base~君がくれたもの~」(2001年、作詞:町田紀彦、歌唱:ZONE)

握りしめた手が何か言う「駆けだせば間に合うさ」と

コンビニで雑誌立ち読みしてた 昨日の僕にBye bye

「サクラ咲ケ」(2005年、作詞:相田毅、歌唱:嵐)

自然は雪や太陽連れて レビューを見せに来る

夕映え 樹氷を染めれば しばらく地球は止まってる

「サーフ天国、スキー天国」(1980年、作詞・歌唱:松任谷由実)
誰かの不機嫌も寝静まる夜さ バイパスの澄んだ空気と僕の街
「エイリアンズ」(2000年、作詞:堀込泰行、歌唱:キリンジ)

直喩を読む

比較的ストレートに何かをなぞらえていることを示す直喩。存在感が強いレトリックの一つで、擬人と同じく取り入れ方にちょっとしたコツがいります。

あなたの事が あなたの事が 波の音のように離れないのさ

あなたの事が あなたの事が ハイビスカス以上に輝いてるのさ

「恋のマイレージ」(2002年、作詞:土屋礼央、歌唱:RAG FAIR)

君の肩に悲しみが雪のように積もる夜には

心の底から誰かを愛することができるはず

「悲しみは雪のように」(1992年、作詞・歌唱:浜田省吾)

遅れた時計直すよに 人を傷つけた日もある

儚い恋に口ずさむ さくら貝のうた

「かげふみ」(1984年、作詞:村下孝蔵、歌唱:高田みづえ)
切ない空に浮かべていたのさ 蜉蝣みたいな二人の姿
「日なたの窓に憧れて」(1992年、作詞:草野正宗、歌唱:スピッツ)

隠喩を読む

「ようだ」や「如く」を使わずに対象をメタファーする隠喩。仕込みが足りないと伝わらず仕込みすぎるとシラけがちで、調整が肝要です。

別に他の誰かを好きになってくれてもいいのに 回る地球はメリーゴーランド

「ア・ブラ・カタ・ブラ」(1994年、作詞・歌唱:米米CLUB)

どうでもいいようなことをお互い持ち出した

最初は土や木でも次第に石器になる

「帰り道」(2016年、作詞: 小林武史&越野アンナ 、歌唱:anderlust)

少し背の高いあなたの耳に寄せたおでこ

甘い匂いに誘われたあたしはカブトムシ

「カブトムシ」(1999年、作詞・歌唱:aiko)
四畳半の窓を開けて見上げれば現実が巡る 実在しない星を探す心がプラネタリウム
「プラネタリウム」(2005年、作詞:藤原基央、歌唱:BUMP OF CHICKEN)

おわりに

ということで、建国記念日の今回は、「歌詞の中におけるレトリック」をテーマにお送りしました。いかがでしたでしょうか?普段、音楽は「聴く」ものだと思いますが、球にはこうしてゆっくりと「読む」のも悪くはありませんよね。

というわけで今週は以上です。また来週この時間にお会いしましょう…と言いたいところですが、来週は月曜日に特別編をお送りします!!

特別編の公開は2月14日(月)、時間は本編と同じ19時です。お楽しみに~。

作者よりお知らせ

当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。

https://docs.google.com/forms/d/1oyWzQmlP1xmSZ_x4uGCZjOHnx29GuFG_OD3jAr0fzA0

このコラムで紹介した楽曲のプレイリストを用意しました。LINE MUSICで聴くことができます。以下のURLからアクセスしてください。次回以降の紹介曲についても順次公開していきますのでよろしくお願いします。

https://music.line.me/webapp/playlist/upi7nLrdtfvhxjzl_GXu9zYQaUd_BLXPXHlL?myAlbumIf=true

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村尾 佳祐

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