
皆さんこんばんは。金曜日の午後7時、「THE・今夜も音楽三昧」の時間がやってまいりました。今週もよろしくお願いします。
今回ですが、「ラジオ」の話をしたいと思います。皆さん、ラジオは聴きますか?
筆者は大学受験が終わってまとまった時間を確保できるようになったタイミングで本格的にラジオデビューしまして、夜の音楽番組が夜なべのオトモになりました。トークの方でも面白いネタがあったりしてどっぷりハマっております。
今宵は、そんな「ラジオ」をテーマにお送りします。今回もどうぞ最後までお楽しみください。
ラジオの歌と言えば…
「ラジオ」がテーマの歌と言えば、この歌を思い出す人が多いのではないでしょうか?
何も聞こえない 何も聞かせてくれない
僕の体が昔より大人になったからなのか?
「壊れかけのRadio」(1990年、作詞・歌唱:徳永英明)
そう、「壊れかけのRadio」です。元々はリーガルドラマ「都会の森」の主題歌として作成された曲ですが、テーマは「成長」。ラジオを聴いていた子供が思春期を経て少年から大人になっていく過程を歌っています。その成長の中でこれまで知らなかったことを知って「しまったり」、これまでの人生では考えなかったようなことを考えて「しまったり」して幸福の意味を探す様子を、朽ちていくラジオと共に描かれます。
筆者自身はラジオを本格的に聴くようになったのは大学生になる前後からなのでこの曲のように思春期にラジオを嗜んでいたわけではありません。しかし、ラジオというのはリアルタイムで全国各地のリスナーから寄せられたお便りが読まれ、遠くの人々とも同じ時間に同じ歌を共有できるものです。 そ戸で読み上げられるお便りは、ともすれば自分とは住まいも経歴も全く違う人が書いていますし、流れる歌もその人が選ぶのでジャンルがバラけます。 しかも目まぐるしく次の投稿が飛び込んでくるSNSとは異なり1つ1つのお便りやそれに対するMCの返しがじっくりと味わえます。自由を求めがちな思春期の人々にとって、ラジオがこの上ない刺激をもたらすものなのだろうということは容易に想像できますね。
華やいだ祭りの後 静まる街を背に 星を眺めていた けがれもないままに
遠ざかる故郷の空 帰れない人波に 本当の幸せ教えてよ 壊れかけのRadio
「壊れかけのRadio」(1990年、作詞・歌唱:徳永英明)
ところで、この曲が出た頃(1990年)はそれこそラジオが若者の熱狂的な人気を集めていた時代だったわけですが、現代の思春期の学生たちはラジオをどれくらい聞くのでしょうかね?ちょっと気になるところです。

しかし、そそっかしさが災いしたのか、今や壊れかけどころか完全に壊れてしまっている…
この分野の先駆的存在となった「トランジスタ・ラジオ」
「壊れかけのRadio」が出たのは1990年のことですが、それより前でラジオがテーマのナンバーと言えばコレ!という曲がありました。「トランジスタ・ラジオ」です。
内ポケットにいつも Oh トランジスタ・ラジオ
彼女 教科書ひろげてる時 ホットなナンバー 空に溶けてった
「トランジスタ・ラジオ」(1980年、作詞:忌野清志郎&G.1,238,471、歌唱:RC SUCCESSION)
この曲が世に出たのは「壊れかけのRadio」のちょうど10年前に当たる1980年。この年「雨上がりの夜空に」のヒットで一気にジャパニーズロック旋風の中に殴り込みを果たしたRC SUCCESSIONが歌っています。
詞を通して描かれるのは、授業をサボってラジオを聴く学生の様子。当時はレコードがまだ高く、レンタルショップの概念もまだない時代。テレビの音楽番組も演歌主体のため、学生が所謂「若者ミュージック」に触れる貴重な場がラジオだったわけです。加えてラジカセもまだ浸透しておらず、ラジオは「数少ない音楽を持ち運ぶ手段」でもありました。そう考えると、刺激を欲する若者たちがラジオから流れるロックンロールに胸を躍らせていたであろうことは想像に難くありませんね。
ベイエリアから リバプールから このアンテナがキャッチしたナンバー
「トランジスタ・ラジオ」(1980年、作詞:忌野清志郎&G.1,238,471、歌唱:RC SUCCESSION)
「ベイエリア」とは サンフランシスコ海岸地帯のことで、ロックバンド「ジェファーソン・エアプレイン」のお膝元。「リバプール」はイギリスの都市で、かの有名なビートルズのお膝元。当時の若者たちがいかに海外の音楽に傾倒していたかが分かるフレーズだ。

自分達が居る日本国の狭さを学生たちに思い知らせる上では至上の資料と言えるのかもしれない
ラジオから人気に火がついた「OiSa」
そんなラジオですが、音楽の聴き方が多様化した現在でも一定の立ち位置を得ています。特にラジオの音楽番組はリスナーたちが司会者を間に音楽という共通言語で交流をする場であるため、地上波デジタル放送の歌番組とはまた違う音楽を楽しめます。
こう言うと「昔の曲を知る機会になるってこと?」と思う方も多いでしょう。それは間違ってはいないのですが、最近の曲がラジオを通じて人気が拡大するということも、案外見られます。この曲もその一つ。
君が思ってた想定の遥かナナメ上 やたらめっためたテンションブチ上げ
あからさまに不安になりすぎたらそりゃ萎え で、何ゆえ?
たまにはどう? 無鉄砲! OiSa OiSa OiSa OiSa OiSa…
「OiSa」(2020年、作詞:渡邊忍、歌唱:ばってん少女隊)
歌っているばってん少女隊が福岡を拠点としているローカル音楽ユニット、しかもシングルカットされていない楽曲であることもあって、地上波でお目にかかる機会はそこまで多くなかった曲ですが、ラジオで流されるとそこからじわじわと知名度が上がっていきます。音階の変化がほぼない…と思ったら最後の1音だけ跳ね上がるフレーズを繰り返すAメロ、タイトルを連呼するだけのサビ、民謡調のノリが特徴的な遊び心のあるサウンドと読み進めると実はメッセージ性に富む歌詞の取り合わせなどといったエッセンス、そしてそれらが織りなす中毒性の高さが評価され話題騒然に。2021年4月には有線放送最多問い合わせ楽曲にも選ばれて表彰を受けました。ラジオ・カルチャーの志向と「テクノポップ×和風」という音楽性が見事にかみ合った結果と言えるでしょう。

お祭りと聞くと、岐阜県の2代徹夜踊り(郡上と白鳥)が思い浮かぶ人も多いのではないだろうか
ラジオという名の「音楽の処方箋」
また、ラジオの音楽番組の醍醐味と言えば、やはりリスナーからのお便り・リクエストとそれに対する司会者の掛け合い、あるいは選曲ではないでしょうか。その性質上、「こんな時はこんな歌を」という「音楽の処方箋」が示されることも多々あるわけです。
例えば、「最近フラれてしまったんです」と打ち明けるお便りには、こんな曲が処方されていました。確かに、こんなことが言える男って格好いいな、と思わせてくれるフレーズですね。
君を守れた事が今でも僕の誇りだから 好きな人を愛せばいい
君が決めた事だから 最後まで 信じつづけて
「サイレンスがいっぱい」(1985年、作詞:康珍化、歌唱:杉山清貴&OMEGA TRIBE)
別の放送界では、「安定職に進むか音楽の道に進むかで迷っている」という趣旨のお便りにこんな曲で背中を押していました。彼が悔いのない判断をできたことを祈りたい。
私は出来ないけれど 才能あれば 世界なんか恐くない そこまできてるわ
21世紀には運が向いてくるはず 一曲やってよ! かっこいいヤツ
「テリヤキ・バーガー」(1990年、作詞・歌唱:森高千里)
そして、「明日で連休が終わってしまう」と嘆くお便りに処方されたのはこの曲。ひねりはまったくないけど、そのストレートさは素直に好きかな。
東京タワーで昔 売ってた土産物に貼りついてた言葉は「努力」と「根性」!
Hey,hey,hey,Girl! 仕事だからとりあえずがんばりましょう
Hey,hey,hey,boy! 空は青い 僕らはみんな生きている
「がんばりましょう」(1994年、作詞: 小倉めぐみ、歌唱:SMAP)
…こういう空気感こそがラジオの醍醐味で、リスナーが惹きつけられる所以なのです。

3色の細菌を同じ色のカプセルで退治していく、単純だが奥深い作品だ
おわりに
最近はインターネット・スマートフォン向けサービス「Radiko」の整備が急速に進み、ラジオ放送は一昔前と比べるとかなり身近になっています。テレビや動画サイト、それにストリーミングもいいけれど、ラジオ特有の温かみのある音楽体験に浸ってみるのも悪くはないかな、と思うのです。
それでは今週はこの辺で。また次回、来週のこの時間にお会いしましょう~。
作者よりお知らせ
当コラムでは、内容向上などの参考とするため、読者アンケートを行っております。ぜひとも感想をおきかせいただければと思っておりますので、以下のURLより回答をよろしくお願いいたします。所要時間は1~2分程度です。
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