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あの日の歌に寄す~秋篇~

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Prologue

皆さんお久しぶりです。企画部の村尾です。先日、無事編集者歴が2年目に入りました。今後もより良い記事を書けるよう微力ながら精進していきますので、何卒「粋」をよろしくお願いいたします。

さて、今回ですが、今年4月に公開したこの記事の「続編」というか「第2弾」というか…な記事です。時間があればぜひ下の記事も一度読んでくださるとうれしい限りです。

では、今回も書いていこうと思います。ぜひ最後までお付き合いください。

SCENE 01:Innocent world

「坂道」というものは何かと写真映えしやすいと思うのは私だけだろうか。

坂の手前から撮る空に昇っていくような構図も、坂の頂上から撮る下界に下るような構図も、どちらも得も言われぬ趣を感じる。そして、そういう坂道を撮ろうと思う時、似合うのは「カンカン照りの太陽」ではなく「穏やかな日差し」だと思うのだ。おそらくこの歌の影響だろう。

陽のあたる坂道を昇るその前に またどこかで逢えるといいな


「Innocent world」(1994年発売、作詞:桜井和寿、歌唱:Mr.Children)

この歌を通じて、「坂道を昇る」ことは新しい世界、今いる場所から去っていくことを意味している。Innocentには「罪のない」以外にも「無垢な」という意味があるから、精神的に大人になることを意味しているともとれる。どちらにせよ、今の場所から立ち去ることには名残惜しさもあるだろうが、それでも語り手はこの旅立ちにポジティブであろうとしている。

知らぬ間に忘れてた笑顔など見せて 虹の彼方へ放つのさ 揺れる思いを


「Innocent world」(1994年発売、作詞:桜井和寿、歌唱:Mr.Children)

語り手はおそらくこの後「陽のあたる坂道」を昇っていくのだろう。その時に彼が虹の彼方に放った想いとはどんなものだったのだろう…なんて、想いを馳せてみるのも、悪くはないと思える。

名神高速道路で愛知県から関西方面に向かうと、滋賀県の瀬田西IC-大津IC間でこの坂道を
下っていく。たまに関西方面に行くとき、密かに楽しみにしている景色の一つだったりする。

SCENE 02:19 GROWING UP

トップ・ギャランではないが、青春時代と呼ぶべき時代は夢のようなものなのかもしれない。「空も飛べそうな感覚」とでも言おうか、何でもできそうな感覚を手に入れ、それゆえにほかの年代では絶対にしないであろう挑戦が、案外できてしまう。そういった挑戦が忘れられなくなったり、その時期に出会った人々との絆がより強固になる、といったケースも多いだろう。それで、過ぎてから「夢のような時代があった」と回顧するのだ。

さて、青春時代が終わっても人生は続くので、青春時代が終わったならば次の時代への準備をせねばならない。そんな「過渡期」の心情を巧みに表現しているのが、この歌である。

19 GROWING UP! それぞれのTreasure Island 1つずつ思い出に変わってく

19 GROWING UP! 今でもうまくやってるなら忘れるなよ いつまでも

「19 Growing up」(1988年発売、作詞:富田京子、歌唱:PRINCESS PRINCESS)

青春時代が去り、その時の記憶が思い出になっていってもなお、そこで出会った仲間たちにはそれを忘れないでいてほしいと願う。と同時に、それは「私は忘れないよ」という意思表示・覚悟の宣言でもある。

そうして心に刻まれた思い出はきっと次の時代に奮い立つための大事なピースになるだろう。そのように考えると、青春時代には「人生のエンジンを探す」という重大なミッションが課せられているのかもしれない。そんなことを考えながら、今日も講義室のいつもの席に座る、11月の午後である。

「粋」本誌の製作中に南山大学の窓の外から撮影した景色。こういった些細な風景も、
「 次の時代に奮い立つための大事なピース 」になる可能性は十二分に秘めているものだ。

SCENE 03:背番号のないエース

これを書いているとき、甲子園球場とZOZOマリンスタジアムでは、セ・パ両リーグのクライマックスシリーズが行われている。初戦から令和の怪物・佐々木選手(ロッテ)が6回1失点・159km/hを3度計測する力投を見せるなど、熱い試合が続いているようだ。

そんなわけで国民的スポーツの一角に列挙されている「野球」。当然さまざまなアニメの題材になっているが、かの有名作「タッチ」はストーリーの軸の1つとして「三角関係」を投入したことが他の作品とは一線を画していたといえるのかもしれない。それは劇中の音楽にも表れている。もちろん星屑ロンリネスが一番有名なのだが、今回は別の曲。

ハートのエース背中に隠し 「あいつの事をよろしく」なんて

お人好しの強がりだよね

「背番号のないエース」(1986年発売、作詞:売野雅勇、歌唱:ラフ&レディ)

この曲も三角関係がテーマ。恋の駆け引きが投手と打者の勝負に例えられ、その勝負から降板した…つまり三角関係に破れた語り手による切なさ・未練を惜しげもなく表した歌詞が聞く者の心を打つ。メタファーがなかなか天才的な一曲だ。

この曲もまた、視点人物は「勝負のマウンドを去る者」、つまり想いに破れし者である。しかし、サウンドはむしろポップスの特性を生かした明るい進行である。こういった「ギャップ」はいつの時代も聞く者を魅了するのだろう…

愛知県民ということもあって、プロ野球だと中日ドラゴンズがやっぱり気になる。
来シーズンから監督が交代するということもあり、まだまだ目が離せないシーズンが続きそうだ。

SCENE 04:気分爽快

先ほどのSCENE 03では「三角関係」の話が少し出たが、実は筆者がハマっているある漫画でも、先日発売された単行本で、作中の世界内の時間に換算しておよそ1年間にもわたって続いていた三角関係 (簡単に言うとその漫画は学園モノで、元々両片思いの男子と女子がいて、その二人が進級時のクラス替えで危うく孤立しかけた女子を二人で助けたところ、その子も男子に恋をしてしまった…というもの) が決着した。週刊の漫画雑誌でそれを読んでいた人によると、5月中にはとっくに決着していた、とのことで今回晴れて単行本にも収録されたんだとか。

さて、「三角関係の終わり」という場面に触れるとき、しばしば思い出す曲があるのだが、その曲、いろいろと「面白い」のだ。まず、一応は失恋歌なのに、タイトルからして「気分爽快」なのである。

やったね おめでとう いよいよアイツとデートか

全く やるわね 私の知らないうちに

二人して彼に憧れてたから 辛いけどOK! ビールで乾杯!

「気分爽快」(1994年発売、作詞・歌唱:森高千里)

この曲を手掛けた森高女史は、「非・実力派宣言」とか、「臭いものにはフタをしろ!!」とか、「あるOLの青春~A子の場合~」とか、妙にユニークな世界観を持つ歌を自分で書いてのける、非常に頭の切れる方。この曲はこれらの曲ほどのインパクトはないかもしれないが、それでも失恋がテーマの曲を「気分爽快」というタイトルが似合う一曲に仕上げてしまうあたり、天才的である。

飲もう! 今日はとことん付きあうわよ 聞かせてよ 彼との出会い 遠慮せず

(中略)

人生だわ、これも巡り逢いなのね ありがとう、ちゃんと話してくれて

明日 明日デートだね 頑張って! 公園や海をドライブ 妬けるわね


「気分爽快」(1994年発売、作詞・歌唱:森高千里)

しかもこの通り、ただただ強がり一辺倒なわけではなく、あくまでも素直に言葉を紡いでいくのだ。きっとこれまでのライバルだった二人はこれからの親友になれたことに違いない。

漫画の世界の彼らはまだ高校2年生なのでお酒は飲めないが、それでも、この歌の登場人物たちみたいな関係でいてほしいな、といち読者としては思うのであった。

筆者は二十歳を越えているのでお酒は飲める年齢だが、残念なことに盛大なる下戸。
ただ、炭酸系の清涼飲料はかなり好きで、新作が出るとついつい気になって買ってしまう。

SCENE 05:風をあつめて

世界というのは、果たして狭いのか広いのか?

案外、自分の心持ちと反比例しているのかもしれない。自分が窮々としているときは外界が広く見えて、そこから抜け出したい焦燥に駆られる。一方で割とうまくいっているときは限界を突き付けられているようで狭さを感じる。もっとも、例外ともいえる状況もそこそこあるので一概には言えぬのかもしれないが。

ただ、この歌の語り手にとっては、おそらく世界は「広いもの」なのだろう。

街のはずれの背のびした路次を散歩してたらシミだらけの 靄(もや)ごしに

起きぬけの露面電車が海を渡るのが 見えたんです

それで ぼくも風をあつめて 風をあつめて

風をあつめて 蒼空を翔けたいんです 蒼空を

「風をあつめて」(1971年発売のアルバム「風街ろまん」収録、作詞:松本隆、歌唱:はっぴいえんど)

この歌を歌っているのははっぴいえんど。日本におけるロックンロールのパイオニアというべきバンドだ。この曲が出た時期はちょうどジャパニーズ・ロックの黎明期と重なるため、「ぼく」はロックそのものではないかと考察する向きもあると聞く。

結局のところ、世界は狭いのか広いのかはわからない。上には上が、下には下がいるように、世界の広さは如何かというのはきりのない問いともいえる。ただ、それでもまだ見ぬ世界に思いを馳せるのは、やっぱり悪くない。

愛知県といえば、名鉄の「赤い電車」。こんなレトロな車種も結構走っていて、
河和線や空港線では、電車が海を渡る光景も何か所かで見られる。

SCENE 06:きっと忘れない

春が出会いの季節と呼ばれる、そのちょうど半年後にあたるからか、別れの季節というと卒業シーズンの春よりも秋が想起される人も多いのではないだろうか? 落葉・落陽など、寂寥感のある風景が最も似合うのも理由といっていいだろう。

何か・誰かとの別れというとやっぱり悲しみがつきまとうが、それでも、すっきりとした別れ・笑顔で「さよなら」を交わせる別れもやっぱりある。私の場合、それに気づくきっかけになったのが、この歌であった。

きっと忘れない また冬が来ても 想い出抱きしめていたいから

空の彼方へと 悲しみ吹き飛ばせ!

信じたい 信じてる あなたが変わらぬように

「きっと忘れない」(1994年発売、作詞:坂井泉水、歌唱:ZARD)

「あなた」との別れがテーマになっているこの歌。この前後の歌詞を見るにおそらく「あなた」は語り手が想いを寄せていた相手だろう。しかし、歌詞の中に「悲しみ」や「切なさ」といった言葉はあるものの、それから吹っ切れているように見える部分の方が多い。しかもそれは決して強がりではなく、ごく自然なプロセスに見えるのだ。

これを書いているとき、ちょうどあるドラマで別れていく恋人達の姿が映った。この先の展開は知らないが、彼らにもこの歌のような未来が待っているとしたら…と、ついつい思ってしまう。彼らに幸多からんことを。

この曲を聴くならば、午前中よりも日が暮れてから、大自然の中よりも都会の真ん中が
似合うだろう。それでいて、決して暗くない曲調なのも秀逸なポイント。

Epilogue

気づけば今年も11月。いよいよ本格的に秋が来たるか…と感じるとともに、今年もあと50余日であることにしみじみとした干渉を感じる。今年はあともうちょっとであるが、その間にどんな音楽との出会いがあるのだろう?

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村尾佳祐

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